【捏造世界史】ミネルヴァの見た原風景

遠い昔を想う。球体がまだ文明を持たなかった時代。
―白夜の朝焼けに反射する雪山の群と、それを歩く荷を担いだ小集団―
そこに”私”はいなかったが、確かに覚えている。

0、フローズンカンティネント開闢

かつての大陸は吹雪が吹き荒れ、とても定住のできる土地ではなかったが、ある時期からまるで何者かに宥められたかのように、穏やかな気候になった。いつしかそこは”フローズンカンティネント”と呼ばれるようになり、その最北の山脈は白さになぞらえて”ミルクマウンテン”と冠された。

1、第一公領の定着

ミルクマウンテンには山岳民族が古くからいたことが知られている。彼らは安定した気候になりはじめた時期から麓に降り定住するようになった。山には広大な鉱脈が埋まっており、これを掘り当てた者がやがてその土地の主権を握るようになる。この時代を第一公領時代と称する。

公領はその後世襲制で引き継がれていたが、ある代目の頃に事件が起こる。ある日屋敷の廊下に不思議な紋章が浮かび上がった。最初は子供のいたずらだろうと思われたが、筆跡もなく、誰も浮かび上がった瞬間を見ていない。屋敷の者は不気味に思ったが当代目だけは「神秘の護符だ」とこれを奉った。

だがこの代を以って当代とその妻子、従者共々に怪死を遂げ、領家の血は途絶えた。急激な死は街にショックをもたらし、残された財産と主権を巡って混迷の時代を迎えることとなる。

2、第二時代

第一公領の次の時代については戦禍の影響か資料が少なく、詳細は不明である。個人的な体験を述べるとすれば…いや、やめておこう。ただ、おぞましい情勢であったことは確かだ。この時代を第二時代と仮称しておく。

3、第三市街の成立

戦乱もそう長くは続かなかった。やがて勝者の中から自然と協和に向けて活動する組織が目立ち始め―逆にいえば、敗者は淘汰されたのだ― 第三市街となる基盤を作り上げた。初期体制は議会制度をとっていたが、やがて軍事家系が割合を占めるようになり、実質軍事政権と化していた。

補足※議会の基盤を作った勝利者たちはそもそも武力の高いつわものが多いが、これは一種想定内のことだろう。実際、抑圧的というよりもむしろ、公庫となった鉱脈による富の再分配で景気は安定し開放的な時代が長らく続いた。

しかし、年を経るごとに寒波が激しくなり、ついには年中大運河が凍りつくようになってしまった。第三市街はそれまで鉄鋼の輸出貿易が主な収入源であり、大運河は都市の要であった。気温と比例するように市街の景気は下がる一方となる。

幸い、鉄鋼だけは豊富にあるので、不景気の中製造業だけは賑わいを見せた。にわかに緩やかな空気が流れる状況の中、政権はさらなる気候悪化を懸念して南下政策を立てる。

4、第三市”帝国”宣言と戦争

【河川下侵攻】
好景気だった時代に第三市街は南東にある小規模な街に貸付をしていたことがあり、その金利が未だ返されていないことを理由に、多額の資金を要求。返還がただちになされない場合は軍事的措置をやむを得ないと通告した。あまり裕福でないその街は支払いを拒否し、不当だと訴えたが第三市街軍は即小規模市街を占拠。ついで混乱に乗じて周辺集落を攻略した。この後より第三市街改め「第三市帝国」と呼称し、西フロカンの一国統一達成を宣言する。

補足※もともと西フロカンは各街が孤立していることが多く、土地によっては街および種族同士の対立など、緊張した政局間も少なくなかった。ネオプログヤードのような腐敗した街もあり、そういった街の解体や統一による平和を望む声があったのも事実である。

【回廊の夜事件】
第三帝国軍は西側だけでなく東西の統一をも目指すとして、フラッペフォレストへ繋がるガーリックガーデン北部の村を吸収した。しかしガーリックガーデンは中立地帯のため、ブーイングがのぼることになる。

※補足:【作戦番号××××(重要機密) 焼却処理済み】(注:生存者の証言などを元に記述した。)第三帝国軍は回廊事件以前にミルクマウンテンを超えてジークフリートへ侵攻するらしき予定であったが、山頂にて部隊が壊滅。理由が不可解なため、この作戦は失敗とともに証拠隠滅された。→メモの切れ端を参照する。

フラッペ側攻略不能と判断した第三市国はガーリックガーデンに協力を求めたが、先の事件と中立地帯であるため却下された。イゼル攻略のため海側(ここでは西エリア端少なくとも一部を海とする)からの作戦を検討。造船のため秘密裏に運河からガーリックを通りルーナを目指す。

【星形南東沖作戦】
ガーリック西部海域には中立軍の停泊地があるため海峡を抜け(この非常に大胆な作戦は当時の海軍随一の豪傑が指揮をとった)、ラ・メルセントロを強襲。この時より海軍は第三市街から独立して行動するようになる。

第三市国海軍はラ・メルセントロを拠点として独自に装備を開発。内容に関してはすべて破棄、アラシメによって旧基地も壊滅しており設計図は残されていない。オカルト界隈ではTCN(第三市帝国海軍)製幽霊戦艦の噂が有名である。

単独行動しはじめた海軍との連携がとれず、しびれを切らした第三市帝国軍は西南地方(現ヒネモストバリ)からのエネルギー鉱石発掘の情報を入手。買収を企てるがイゼルとかちあい、交渉の末宣戦布告となる。

【ヒ・フ・イ共同戦線】
第三市帝国側は半数以上の部隊が外人部隊であり、疲弊が目に見えていたがイゼル一国なら攻略可能と判断した。しかしながら予想外のことにヒネモス・フクレセウ・イゼルが同盟を組み防衛戦線を張ったのだ。三街はそれまでほぼ交流がなく独立傾向にあった。

【ナッツ島の戦い】
市帝国軍部は海軍に至急海側からの応援を要請し、海軍はこれに応えようと極秘裏にホシガタ西海岸を進んだがナッツ島にてヒネモス哨戒部隊に船影を補足され、戦闘に及ぶ。海上戦に不慣れなためか一時撤退となる。

【三日月諸島沖海戦】
メルセンへの撤退途中、想定しない燃料消費により資源確保のためルーナ北部の海底資源を狙う。無許可の水上基地建設にルーナ側は忠告するが海軍はこれを無視。強行手段としてルーナ側は軍事手段をとる。

海軍は巨大戦艦の初運用にこれ幸いと応戦したが、ルーナ海軍の強大な戦力の前に窮地に追い込まれ、さらにアラシメによる基地壊滅の追い打ちを受けて降伏。占領されていたメルセントロ南の一部は返還された。このことをきっかけにルーナ軍とメルセンは友好条約を締結。

5、終戦、ベルクバッハの成立

海軍からの連絡が途絶えた市帝国軍上層部は敗戦を覚悟し、三街に降伏。講和会議にて三街への賠償、全領土の返還、本領土の分割とその独立を条件として締結した。西フローズンカンティネント戦争はこれで終戦となり、第三市街は中心としベルクバッハだけとなって生まれ変わった。→三街のその後について参照

以上が私の知る、この街に纏わる歴史である。もちろんすべてを見たわけではないが、すべての時代の空気を、人々のざわめきを覚えている。昔も今も変わらず―例え姿が変わっても― 私はずっとこの街を見守り続けるだろう。
(ミネルヴァの手記より)

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メモ:
年表(仮定)
~以前クロノス誕生
5万年前 球体最初の埋葬(死神トワイライト誕生)

千年前 フロカンがリエンの管理下へ
5百年前 第一公領定着
3百年前 第二時代
270年前前後 第三市街成立
54年前 第三市帝国へ改称
27年前 西フロカン戦争終戦
25年前 クレセ壊滅

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