なななな姉妹とトマトキョウ

ななは、ななかの姉妹はかき氷店を開いていた。
8月上旬。天気は快晴。ジリジリとした真夏の日差しが照りつけるおかげで、売り上げは好調だ。
……しかしななかは浮かない顔で店頭に立っていた。その視線の先は、そして彼女が浮かない顔をしている原因は、先ほどから店の前に座りこみ、食べ終わったカップをうず高く積み上げているカービィにあった。
「トマト味、お代わり!」
レオナルドだった。
「お腹だいじょうぶなの、レオナルドさん?」
ななかは心配しながらも次のかき氷を用意する。開封済みのカップの山が無くなってしまったので新しいカップの袋を開けた。氷をきめ細かく削り、シロップをたっぷりかける。
レオナルドはカウンターに両手をついてななはを見ながら、「シロップ多めでな!」なんて付け加える。
ななかは、フッと吐き出しそうになるため息を必死で堪えた。
たくさん食べてくれる事はいいのだ。味を気に入ってもらえたというのなら、とても嬉しい。

ただ……。

ななはがななかにこっそりと耳打ちした。
「(ななかお姉ちゃーん! このままじゃシロップが無くなっちゃうよう。)」
そう。レオナルドの暴食のおかげで、シロップが底を尽きかけているのだ。
氷ならばななはの能力ですぐに作ることができるが、シロップはそうはいかない。一応材料は余分に確保してあるが、これは翌日、翌々日の分も見込んでの事である。
トマト味は人気商品だ。できる事なら色んな人に味わって貰いたい商品でもある。
ななかが、「仕方ない」といった表情で溜息をつき――何故か少し申し訳無さそうな表情で――通りの向こうを指す。
「レオナルドさん? 向こうにトマト飴を出してる屋台があったよ。」
「ヒャッホォォォォォ!」
一口でかき氷をかき込んだレオナルドは、奇声を上げて全速力で駆けていってしまった。なななな姉妹はホッと溜息をつく。
「ななかお姉ちゃん……強くなったね……。」
「強くなったっていうか、慣れちゃっただけだよ。」
それでも照れくさそうにななかが笑う。ななはも微笑み返して、しかしふと不安そうに、レオナルドが走っていった方向に顔を向けた。
「でも、今度はトマト飴の屋台さんが困るんじゃないかな……?」
「大丈夫だよ。」
ななかが冷静に呟いたその時。遠くから「ギニャー! リンゴォォォォォ?!」という叫び声がうっすらと聞こえた。
「りんごあめの屋台で売ってたから。」
意味が分からず、ななはは首を傾げた。

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