【1期作品/小説】ぼうけんしようぜ!

【あらすじ】
スタビレッジの森を今日も発掘の為にうろついていたジュウドは洞窟を発見する。
それを聞き付けたスタビレッジメンバー。
なんやかんやで洞窟を探検することになった一行だが、実はその洞窟はトラップだらけのダンジョンだったのだ!
 
 
『知力のはなし』
一行がわいわいと洞窟を進んで行くと、奥に見えてきたのは重厚そうな古い扉。
その手前には何やら複雑そうなパズルが置かれた石像が……。

ロットー「なるほどォ、これを解いたら扉が開くっていう仕組みみたいですねェ」
ラピ・ラズリ「少々、複雑な形になっているようですけれど、パズルを解かないことには先に進めそうにありませんわね」
二人は、パズルを前に難しい顔をする。
パズルが解けるまで、時間がかかりそうだ。

ライ「よーし!あたしもやってよー!えーと、これがこーで、あれがあーで、それがあれであれがこれでええー?」
ジュウド「落ち着け、ライ。頭から火が出てるぞ」
モース「ううん、これは……ぐぅ」
ジュウド「お前は寝るな」
お世話係、ジュウド。
パズルを解くどころではなさそうだ。

違った意味で頭を悩ませている面々を余所に、りんこはパズルをじっと見つめた。
りんこ「ふむふむ。えーと、これをこーしてー……っと!みんなー!解けたよー!」
みんな「はやっ!?」
 
 
『力のはなし』
りんこの活躍でパズルを解き、見事、扉を開くことに成功した一行は更に先に進んで歩きだす。 
だが、そこで再び一行の行く手を遮る巨大な壁。
飛び越えることは出来なさそうである。もはやここまでかと思われた洞窟探検だが……。

りんこ「これじゃ、先に進めないよー!」
ラピ・ラズリ「そうですわね……この壁、どうにか壊せないものかしら?」
モース「力のある人だったら、壊せるかもしれないね」

ロットー「ではではアタクシがァ……」
進み出てきたのはロットー。不敵な笑みを浮かべている。
これは、いけるか?期待を寄せ見つめる面々。
ロットー「そォい!」
ロットーは勢いよく拳(?)を突き出した!

メキィッ
どこからか嫌な音がした。

ジュウド「?……おい、どうしたんだ?」
ロットー「……」
ジュウド「し、死んでる……」
ジュウドはゴクリと生唾を飲み込んだ。

壁は結局、ライが壊すことに。
ライ「フライング・ずつきアターック!!」
ライの強力な頭突きを前に、ガラガラと脆い壁は崩れていった。
みんな「おおー!!」
拍手喝采。
みんなからの惜しみない拍手を浴びながら、ライは得意気な顔をしてたんこぶを撫でた。
 
 
『特殊のはなし①』
天国へ逝きかけた者はいたが、ライの活躍により壁を壊し、先に進むことができた一行。
数々のトラップを乗り越え、彼らはついに洞窟の奥まで辿りつく。
しかし、そこに待ち構えていたものは金銀財宝ではなく、大量のモンスターだった!!

ジュウド「モース!コピーさせてもらうぞ!」
モース「わかった」
モースに分析光を当て、リーフをコピーするジュウド。
しかしその隙に横からモンスターの吐いた炎が!
炎を避けようにも間に合わない。
万事休すかと思われた、そのとき!

炎が届く、その直前。
颯爽と二人の前に立ち塞がった影があった。
ラピ・ラズリ「ミロワール!」
その声と同時に現れた巨大な宝石の鏡が、攻撃を仕掛けてきたモンスターに向け炎を反射した!

倒れ伏したモンスターを一瞥し、ラピ・ラズリは二人に向き直る。
ラピ・ラズリ「お二人とも、大事なくて?」
問いかける声に安堵の溜息を吐くと、二人は口々に礼を言った。
ジュウド「悪い、助かった」
モース「大丈夫だよ、ありがとう」
ラピ・ラズリ「いえ、怪我がなくて何よりですわ」
二人の感謝の言葉に、ラピ・ラズリは上品に笑ってみせた。

モース「あれ、リーフじゃないんだね」
ジュウド「ああ、さっきのやつの炎を分析してしまったらしいな」
リーフをコピーする予定だったジュウドのアンテナからは炎が出ている。
ジュウド「……まあ、戦えれば何でもいいだろう」

ジュウド「それで、お前はどうする?隅の方で待機していてもいいが……」
モース「うーん。じゃあおれ、苔生やしてるよ」
ラピ・ラズリ「私は援護をさせていただきますわ」
ジュウド「……苔生やすの、要るか?」
ジュウドは疑問に思ったが、モースの生やした苔は敵を滑らせたりと、意外と役に立っていたのだった。
 
 
『特殊のはなし②』
ジュウド、モース、ラピ・ラズリが急ごしらえながらも連携のとれた戦闘をしている頃。
ライ、りんこ、ロットーの三人はというと……?

りんこ「よーし!歌うよー!」
ライ「イエーイ!」
ロットー「待ってましたァ~!」
いきり立つ敵たちを前に、三人は楽しそうだ。
りんこが挙手して宣言すると、ライとロットーはきゃっきゃと囃し立てた。
……かと思うと、さっと耳(?)を塞ぐ。

そうして、りんこの歌が終わるときには周囲の敵は皆、ぐっすりと眠りについていた。
ロットー「いやァ、流石ですねェ」
ライ「りんこちゃん、すっごーい!」
りんこ「えへへ、上手くいって良かったぁ!」
りんこは二人に褒められて、嬉しそうに笑った。
 
 
『たからばこ』
そんなこんなで敵を全員伸した一行は、モンスターたちによって隠されていた更に奥の部屋があることに気付く。
中を覗いてみると、そこには小さな宝箱らしきものが一つ、鎮座していた。

りんこ「何が入ってるのかな?」
ジュウド「りんこ、無闇に開けるなよ」
興味津津といった様子で宝箱を眺めているりんこに注意するジュウド。
同じように興味深げに宝箱を見ていたロットーもその言葉にうんうんと頷いた。
ロットー「そうですねェ、開けたらドッカーンッ!なんてことになるかもしれませんしィ」
ライ「あ!鍵?が入ってるよー!」
無邪気な顔で宝箱を開けているライを見て、ラピ・ラズリは苦笑した。
ラピ・ラズリ「……遅かったようですわね」
 
 
『速さのはなし』
ライが問答無用で開けた宝箱の中には、錆びた黄金の鍵。
ライは何処に使うものなのか分からないその鍵をひょいと手に取った。
その瞬間、カチリ、という音が宝箱が置かれた小部屋に響く。
一部のメンバーは、嫌なものを感じ、口を引き攣らせる。
音がしたと思った数秒後、大きく洞窟内が揺れ、天井からパラパラと土が降ってきた。
驚き呆けていた一行は、ジュウドの「逃げるぞ!」の一喝に、はっと我に返り、慌てて出口へ向けて駆け出した!

ラピ・ラズリ「急ぎましょう、洞窟が崩れてきているのかもしれませんわ」
ジュウド「ああ、あの鍵を取ると何らかのスイッチが作動する仕組みになっていたんだろう……って、待て!後ろが全くついて来れていない!」
振り返ると、4人がもたもたと走っていた。
 
 
『速さのはなし②』
ラピ・ラズリとジュウドは走るスピードを緩め、他のメンバーが追いつくのを待った。
――どう見ても、遅い。
本当に急いでいるのかと疑うくらいには遅かった。
しかし、彼らはこれでも全速力で走っていた。

ライ「きゃー!いっそげえー!」
揺れる洞窟にライが歓声を上げながらパタパタと走る。
ロットー「ほいさっさァ~」
どこか呑気なロットーが跳ねるように走る。
モース「……うーん?」
何か考えながらのんびりとモースがモフモフと走る。

ロットー「モースクン、どうしましたァ?」
モース「おれ、何か忘れてるような気がする」
ロットー「何か、ですかァ?」
ぼんやりした答えに、ロットーも走りながら考え込む。
そのとき、背後から小さな声がした。

りんこ「まっ待ってー!」
その声にはっとして振り返ると、遠くの方で手を振っているりんご帽子が見えた。
ロットー「りんこチャン!?」
モース「あー、おれが忘れてたの、りんこだったんだね」
驚くロットーの横、モースはなるほどと手を打った。

少しその場で待ってみたが、りんこは辿りつかない。
りんこが全力で走っていることは分かるが、いかんせん足が遅く、早足並みのスピードしか出ていないのだ。
モースとロットーは左右でりんこと手を繋ぎ、ラピ・ラズリたちを追うことにした。
 
 
『体力のはなし』
足の速さにより、一度バラバラになった一行であったが、速度を調整し、助け合い、なんとか再び全員が集結することができた。
来た道を引き返し走っていた一行。
しかし、その先では揺れのために天井が崩れ、道が塞がってしまっていた。
そのため、別の長い回り道を通らざるを得なくなってしまう。

ラピ・ラズリ「はぁ、はっ……ケホッ、はぁ…」
ジュウド「……少しペースを落とそう」
ロットー「無理は禁物ですよォー」
初め、先頭を走っていたラピ・ラズリだったが、走っていくうちに体力が尽きたのか、次第に苦しそうに呼吸をするようになっていた。

ラピ・ラズリ「いえ、大丈夫ですわ。ですから、皆さんは先に……」
みんなの足を引っ張るまいとするラピ・ラズリの言葉を遮ったのは、底抜けに明るい声だ。
りんこ「ぜったい、置いて行ったりしないよ!」
ライ「手つないだらだいじょーぶ!だよ!一緒にいこー!」

ラピ・ラズリ「えっ?」
眩しい笑顔と共に差し出された手に、ラピ・ラズリはパチパチと目を瞬かせた。
ふと目をやると、他のみんなもその言葉に同意するように柔らかい表情で頷き返してくれる。

ラピ・ラズリは何か気恥ずかしいものを感じ、俯きがちになりながらも微笑んでその手をとった。
ラピ・ラズリ「ええ。……ありがとう」

モース「あ、でも、りんこはおれたちと手を繋いでるから、無理だよ」
りんこ「そうだった!」
ロットー「えェ~!いやいやァ、忘れないでくださいよォ~」
ライ「んーと、じゃあ、あたしが左手でジュウドちゃんが右手ね!」
ジュウド「ああ。……いや、俺要らないだろ」
 
 
『ねくすとすてーじ』
なんだかんだで結局モース&りんこ&ロットーとジュウド&ラピ・ラズリ&ライで仲良く手を繋ぎながら洞窟を走り抜け、外へ飛び出した。
各々、ゼェハァと息をついて草はらに転がった。

ジュウド「ああ、エライ目にあった」
ロットー「あははァ、アタクシ、もう動けそうにありませんよォ……」
モース「うん、疲れたね」
ラピ・ラズリ「そうですわね……」
りんこ「でも、楽しかったー!」
ライ「ねー!コレ取ったらゴゴーってさー!」
疲労感から倒れ込んだまま動かず、ぐったりとしている4人とは対照的に、りんことライはきゃっきゃと楽しげに笑顔を浮かべている。
身振り手振りで驚きを伝えるライのヘアバンドがキラリと光る。

りんこ「あっそれって宝箱に入ってた鍵?」
ロットー「えェ!?……おやァ、本当にそうみたいですねェ」
ジュウド「あの状況でよく持ってこれたな……」
呆れるやら感心するやら、複雑そうな目で見るジュウドにライはニマッと得意気な顔をした。
褒めているわけじゃねぇんだが、と溜息を吐いたジュウドは不思議そうな顔をしているラピ・ラズリを見る。
ジュウド「どうかしたのか」
ラピ・ラズリ「……やっぱり、私、このような形の鍵穴は、見覚えがありませんわ」
ロットー「へェ!ラピチャンでも見たことがないんですかァ?」
ロットーが小さく驚きの声を上げる。
長いことスタビレッジにいるというラピ・ラズリですら見覚えのない鍵。
その言葉に興味を惹かれたのか、みんなでライの持つ鍵を覗きこむ。
錆びた黄金の鍵は、確かに見たこともないような形をしていた。

暫く、みんな揃って黙りこみ、じっと鍵を見ていた。
疑問を代弁するかのように、モースが沈黙を破り、ポツリと呟く。
モース「この鍵は、いったい何を開けるための鍵なんだろうね?」
ライはモースの言葉に、鍵をぎゅっと握りしめ、跳び起きた。
その拍子に周りで寝ころんでいた面々がコロコロと転がる。

ライ「わかんない!けど、すっごーいワクワクが待ってる気がする!!」
ライは転がる面々を余所にこの先にある未知の予感に胸を高鳴らせ、瞳をキラキラと輝かせた。
空に掲げた鍵が太陽の光を反射して、キラキラと輝く。
それは、新たなる冒険の始まりでもあった。
 
 
(おわり!)

Twitterでこのページを宣伝!Share on twitter
Twitter

コメントを残す