おいしし怪談小噺集「月の穴の底」

おや、いらっしゃいませ。今日は何をお探しですか。

…え、なんです?

ーー怖い話はないか、ですって?

お客様、確かにうちは「よろず屋」ですが、伽話を棚に並べた覚えはありませんよ。

ふむ、…お金は払う……と、

あらあら!それではまた話は別ですとも、ええ、ええ…

戸棚に並べていなくとも、よい商品というのは、勿論!ありますよ。

うちは「よろず屋」ですからね、お金になるならなんでも扱います。

というわけで…そうですねぇ、それでは、この町に関する話でもひとつ、させて頂きましょうか……

ーーーーー

この町、ええ…ムーンホールには、一つ昔からある言い伝えと言いますか、噂があるそうでして。

この町は、ご存じの通り円形状の建物が重なった二階建て構造なのはご存じかと思いますが、その噂というのは、今我々がいる場所からさらに下、地下があるという話です。

それも、ただの地下室…というのではなく、町のどこかに入り口があって、さらにそこから複雑に入りくんだ地下の大迷宮に繋がっているとか……いないとか。

ふふ、ええ、そりゃあ、噂ですからね。
少しはそういった部分もありますよ。

……それで、何故そんなものがあるのかということについても、色々言われているようでして、

私が聞いた話では、ムーンホールが戦争をしていたことの名残だとか、地下に宝が隠されているとか、もともとあったダンジョンの上に、ムーンホールを作って封印したんだ、だとか……

そうそう、幽霊が出るなんていう噂もありましたね。

まあ、どれも眉唾な話ですけれども…それでも、実際に、この町のどこかにそんな場所があったら、面白いと思いませんか?

「月の穴」の、さらに底……一体何があるんでしょうね。

…ふふ、どうでしょう、こんなところでご満足頂けましたでしょうか。

……え、私はその地下はどうして作られたのだと思うか、ですか?

そうですねぇ……

大量のお店の在庫を置いておく、保管庫!とかでしょうか、ふふふ…

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