【小説】ハロウィン2017(9終)

「最後の締めに1発ユー達にお見舞いしちゃうョ!」
そう言うも手を握り、こちらをジッと見つめるだけのハロウ。
ビーストリヒとライロは先程の経験から、遠距離攻撃にシフトする気満々であまり動こうとしない。
(なるべく魔女を広間の端に追い詰めたいが…)

「ライロ、氷柱飛ばしはこの気温でも出来そうか?」
「え?…ビーストリヒのアイスがあるから、多分大丈夫だ ていうか、今その作戦で行くつもりなんだ」
よし、後はビーストリヒに頑張ってもらうしかない。
「ポチ、なるべく死角を作るように氷を生やしてくれ。ライロが使う氷柱とは別に壁用のな」
「簡単に言う…」
コピー能力にはあまり自信が無い彼には酷だが、動けそうなのは彼しかいない。
「私に良い考えがあるから、ちゃんと動いてくれよ ライロは砕けた氷を飛ばして、なるべく魔女を広間端に追いやること。それじゃあ、作戦開始!!」

リエンの掛け声を合図に、ビーストリヒがアイスを使ってハロウに襲いかかる。
やっと攻撃してきたのを確認し、動き出すハロウ。
握っていた手を離し、白い玉を手から飛ばしてくる。
飛ばされた玉は物に当たると小さな蜘蛛の巣ネットになるようだ、地面に巣が広がっていくのが良くわかる。
「これに当たると動けなくなっちゃうよ!!」
上手く氷で玉を防ぎつつ広間に氷柱を生やし続ける様子を見て、リエンも次々にフェザーガンを放つ。
割れた氷柱は細かくなり、大きさに斑はあるが飛ばすには丁度良い大きさになった。
「ライロ!!」
「おぅ!!」
氷を浮かべて思いっ切り魔女目掛けてぶっ飛ばした。

「ヒヒヒ 避けるのは得意なんだなー♪」
そう言い軽やかに避けきっていくハロウ。
しかし着実に、ハロウは扉から遠ざかっていった。
…今だ!
「アリェーニ!!突っ込め!!!!」
「ごめんなさぁぁぁぁぁい!!!!」
魔女はどこからともなく現れた女性の突進をもろに食らい水路に突き落とされた。
死角用の壁はアリェーニがハロウに近づくためのものだったらしい。
上手く事が進んでテンションが上がったリエンはすぐさま水路に近づく。
「っしゃおらぁぁ!トドメの一撃!!イナズマおとしッッ!!!!!!」

追い討ちをかけ暫くすると 水の中で雷撃を食らったハロウが浮かび上がった。
「…チカ、チカするぅ…」
目を回して気絶してしまっている。
「容赦ないなお前…」
「私の街を汚した罰だ!ざまぁみろ!」
心が晴々したようで、とてもにこやかな神様。
だが次の瞬間 蜘蛛の軍勢が現れ、水路に浮かんだハロウを回収しスイートストリートの扉に走り去っていった。
突然すぎて何が起こったのか理解出来なかった4人は立ち尽くしている。
「………おぃいいい!!!?」
魔女と蜘蛛は扉の裏側に逃げていく。
慌てて追うと、扉の裏には大きな裂け目が出現していた。
蜘蛛と魔女を飲み込みすぐ閉じてしまった裂け目は、跡形もなく扉から消えてしまう。
「ここまでさせといて綺麗にトンズラするなぁぁぁぁぁ!!」
めちゃくちゃになった中央広場にリエンの悲痛な叫びがこだました。

「うぁぁぁ…頭が痛い…」
何とか街に戻ってこれたハロウと蜘蛛たち。
「へへ、でもお土産持ってこれたし… great」
なんとこの魔女、最初っからスイートストリートのお菓子が目的だったようだ。
帰り用の狭間作りを担当していた親玉蜘蛛は、ハロウと合流するまでの間に扉を通じてお菓子を盗んでいたらしい。
「エクサクム喜ぶねぇ〜」
ニヤッと笑ったハロウは、これからまる1日眠りにつくのであった。

「それで?魔女には逃げられてしまったのですね?」
「はい…」
一方、ハロウィンをめちゃくちゃにして行っただけの魔女を捕り逃して数日経ったジークフリートでは、反省会が行われていた。
「絶対捕まえたと思ったのに…」
「いいですか!?貴方はまた禁忌を犯そうとしたんですよ!?下界人に近づきすぎるなと何回言えば分かるんですか!!」
リエンがひたすら天使の説教を食らっている、それもその筈
・人前でのコピー能力使用
・広場に駆けつけた警察官達を無断で眠らせる
・泉の魔術師に助けられる
バリバリ禁忌を犯していると思われる騒動の数々が顕になる。

「今回の説教は長くなりますね」
アリスの言葉にうんうんと頷くビーストリヒ。
「リエン様って、割と戦闘好きなんですねぇ」
アリェーニの言葉に、自分と似たものを感じているライロ以外は大きなため息をついた。
「ボク、リエンさんが戦争起こしちゃったの 今回で何となく分かったよ」
雪兎にそう言われる始末。
子供から哀れみの目で見られる日も近いのかもしれないな、そう思った大人達はまたため息をついたのだった。

「話が違う…」
折角ジークフリートのハロウィンを楽しめると思ったのに、着けば祭りは中止と来たもんだ。
完全に拗ねてしまったミュール。
「まぁまぁ、お祭りは来年もあるし」
レナードは相変わらずマイページな答えを出す。
「あっちも色々大変だったらしいよ?大変だったのなら、仕方ないよぉ」
「でもでもっ!スイートストリートのお菓子が沢山買えたよっ!」
ココロの言う通り、全く収穫がなかったわけではない。
「…」
その点に関しては不満は無いミュール。
「来年は絶対行く」
「そだねぇ 行こうね♪」

来年のハロウィンは魔女の代わりに幽霊がお邪魔するのかもしれない。

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