【小説】ハロウィン2017(8)

一足お先に中央広場にたどり着き、親玉蜘蛛を探すハロウ。
「本当に上手く隠れたねぇ…」
閉ざされたスイートストリートの扉が鎮座しているだけの中央広場でよく隠れられたものだ。
我ながら誇らしくなっていると、追っ手が到着。
「…っ氷がない分走るのは、ちと疲れるな」
「俺はスケーティング出来ないから氷が無くて有難いな 無理すんなおっさん」
「おっさん…」
あれ?意外にも気にするタイプだったのかと驚くライロ。
「しつこい男は嫌われるよーお二人さん!」
追いかけてきた割にはのんびりしている男二人に、魔女の方から話しかけてきた。
「でもラッキーだね!ミーまだお相手さん見つけてないから」
「その状況でその余裕ぶりは危険だな 直ちに取り押さえよう」
ビーストリヒの言葉を合図に、左側からライロがハロウに向かって突っ走った。
反対側からビーストリヒと挟み撃ちにする作戦だが、
「まずは小手調べかな〜」
今やジークフリートはハロウの領域。
張り巡らせた蜘蛛の糸で立体的な動きを実現できる彼女には、かなり手こずるだろう。
「「!!」」
挟み撃ちギリギリで真上に逃げたハロウ。
おかげでライロとビーストリヒは互いに顔面からぶつかり合う。
「ヒャハハハ!!この街の人って割と当たって砕けるタイプばかりだネ!!はぁ…間に合うかなぁ…」

その頃駅前広場では…
「…はっ!」
「あ、起きた」
今までのびていたアリスが目を覚ました。
雪兎が「おはようございます」と呑気に隣で言うもんでアリスは少々混乱している。
「今、警察の人達と ビーストリヒさんとライロさん アリェーニさんが魔女を捕まえに行ってるよ」
「…そう ですか」
駅前に集まった沢山の人。
しかし気を失う前に起きたパニック現象は無く、皆落ち着いて待機しているようだった。
額に置かれたタオルを取り 起き上がるアリス。
「雪兎くん、リエン様は…」
今まですっかりその存在を忘れていた雪兎はハッとした表情になる。
「探しに行きたい所ですが…」
雪兎を一人にしては危ない、アリスはリエンの無事を祈ることしか出来なかった。

「うっわぁ…寒…」
やっと存在を思い出してもらえたリエンは、今だ空中に毛玉で放置されていた。
「私があの蜘蛛魔女をかっこよく捕まえるはずだったのにぃ…」
「ほぅ…かっこよく捕まえて欲しかったなぁ?」
何処からか声が聞こえる、周りを見渡すも姿はない。が この声には心当たりがあった。
「うるさい!この糸引きちぎって【今から】かっこよく捕まえる寸法なんだ!」
ブチッ
毛玉に大きな裂け目が出来た音がした。
「手早く済ませろ うるさくて静かに寝てられん…」
どうやら声の主が切ってくれたらしい、地面には星が煙をあげて突き刺さっていた。
「お前に貸し作っちゃうなんて…お偉いさんからの声が痛そうだな」
大きく体を揺らすと裂け目が広がり無事脱出できたリエン。
しかし翼にはまだ大量に糸が絡みついている。
うまく飛べず真下に落ちてしまった。

「…うぇあ!?」
そしてその下にタイミングよくアリェーニが通りかかり、彼女を下敷きに着地も難なく成功。
「助かったぞアリェーニ! おかげで怪我一つないぞ!」
全身の糸を振い落して礼を言う。
「な、なんて散々なハロウィン…」
強い衝撃を受けてフラ付きながらも立ち上がった彼女。本当に散々である。
「お前も魔女退治か?」
「まぁ、ライロさんのお手伝いに…バトルはあまり得意ではないですが…」
その言葉を聞いてアリェーニの背中を叩く。
「アリェーニ、私の作戦に協力しなさい。嫌とは言わせない、お前を直接的にバトルに巻き込んだりしないから」
凄く嫌な予感…。
拒否権は無さそうなのでとりあえず聞くことに。

数分後
「…本当に大丈夫なんですか?」
「1発で決まればな」
話し合いが終了し広場に向かう2人。
「広場の周りは水路だ、上手く魔女の気を反らせれば…」
とりあえずこの作戦に賭けるしかない。

「うーん…」
避けるだけで飽き飽きしているハロウと、ひたすら振り回されたライロとビーストリヒ。
「ビーストリヒ、なんか飛び道具持ってないのか?警察なら銃くらい持ってるんだろ?」
息を深く吸って一旦落ち着くライロ、接近戦じゃ限界だった。
「俺が隻眼じゃなきゃ、今だに銃も現役だったろうな…」
「隻眼なのすっかり忘れてた…」
「あと、今の状況じゃあ威嚇射撃くらいしか出来ないだろう 相手がこちらに手を出してこないからな」
そろそろコピー能力で闘いますかと言わんばかりに体を伸ばした所に、
「お待たせしました!!!!」
リエンが到着した。

続々と敵が増えていく中、じっと扉を気にしていたハロウ。
何かを確信し、ニヤリと笑う。
「いやぁ皆さん集まってもらっちゃって、ミーとってもHappyネェ!」
先程までまともに動かなかった彼女が喋りだし、空気が一気に張り詰める。
「お相手さん、おかげで見つかったよ…という訳で 最後の締めに1発ユー達にお見舞いしちゃうョ!」

Twitterでこのページを宣伝!Share on twitter
Twitter

コメントを残す