柊「鈍器マスターと行く」~スタビ編②~

前話:柊「鈍器マスターと行く」~スタビ編①~

【サルヴェインスカイ】
 住所不定、神出鬼没の空賊船。通称、「宙船」船員は皆一つのギルドのメンバーであり、この船を拠点として様々な依頼をこなしたり、未開の地への冒険等をしている。
 ただし、メンバーは大抵、何かしら地上の民との因縁を持っていたり、盗賊上がりだったりするので、しばしば各方面で問題を起こしている。
 ちなみに、サルヴェインスカイのギルドへ依頼を出す方法はーー

おっと、これは機密事項でしたね。

ーー『柊の旅行手記-起-』より

赤、赤、赤ーーー

目の前に広がるのは一面真っ赤に染まった大地と、その中に倒れ伏す一人の球体。

普段は明るいオレンジの体色も、今はすっかり青ざめ……いや、緑ざめている。

「トマンチさん!?だ、大丈夫ですか?」

慌てて駆け寄り、二人はぐったりと動かないトマンチを起こす。

「……ゥ…」

「良かった……意識はあるみたいですね…」

「うわ、これ、地面に飛び散ってるの全部トマトだ……酷いな。」

「Non c e la faccio piu…オレサマ……オレサマのトマトが……」

「おそらくショックでこうなったのでしょう……コーパルさん、まだ幾つか生きているトマトがあるでしょうから、気付け用に幾つかもいできて下さい。この人にはそれが一番効きます。」

「わ、分かった。」

うわ言を呟くトマンチを介抱しつつ、柊は農場の様子を確認すべく辺りを見回す。

「これは…一部は風で吹き飛ばされてますが……鋭利な…ナイフかなにかで斬りつけられたような切り口、それにこれは、タイヤ痕…?」

「うわっ!!な、なんだあんた達!」

唐突にコーパルが走っていった方向から、コーパルの叫び声があがる。

と、同時に

「あーもうっ、だからさっさと船に戻ろうっていったのに!」

「しょうがねぇだろ!!このトマトが美味すぎるのがいけねぇんだよ!!フカコウリョクだ!」

聞き慣れない声が二つ。

「……ッ!」

咄嗟に柊が駆け付けた先には、杖を構え相手を牽制するコーパルと、黄色と黒のシマシマを身に纏ったトンボのような球体と、赤い帽子を被り、二振りの短剣をこちらに向けた球体の二人組が対峙していた。

「あーっ!!一人だけかと思ったらもう一人居やがったのか…ちゃっちゃと済ませようと思ったのによーーっ」

と、叫んだのはトンボのような球体。そして、その後ろにはところどころ赤い染みがついた布袋がいくつか積まれた小型の飛行挺。

「柊!あいつらだよ!トマト盗んだやつら!!」

「ええ、分かってます……おそらく、空賊かなにかでしょう。」

柊も、コーパルに会わせ臨戦態勢をとる。

「すげー!!なんで俺らが空賊だって分かったんだ?」

「ちょっ、おい!アーレイド、余計なこと言うなよな!」

「別に細かいこたぁいーだろがコハク!さっさとこいつら倒して、宙船戻ろうぜ!!」

「やる気ですね…コーパルさん!止むを得ません、トマンチさんと……私たちの食べる予定だったトマト料理の仇討ちです!」

「ああ!」

コーパルが武器を構えるーーが、気付けば先程まで目の前にいたはずのアーレイドの姿が見えない。

「コーパルさん!上です!!」

「ダイレクトォォオダイビング!!!」
「ッ、なっ!?」

声を頼りに寸での所で身をかわす。と、地面スレスレで旋回したアーレイドが再びびゅんびゅんと宙を飛び回る。

「は、速い……!」

「ヒャッハーー!!お前みたいな”魔法使いタイプ”には!!ひたすら突っ込むに限るぜええええ!!!」

「っ、!コーパルさん、援護をーー」

コーパルの方に脚を踏み出そうとした柊の目の前を矢が掠める。

「おいおい、敵を目の前にして余所見はダメだろ?お前の相手はーーオレがしてやるよ!」

叫ぶと同時に、コハクは双剣を合体させた弓から柊に向かって幾つもの矢を放つ。

「くっ、コピーキャンディ!」

が、柊は咄嗟に巨大な岩を目の前に出し、これを防ぐ。

「ギリギリで凌いだか…でも、近距離特化の『ストーン』じゃあ、オレの弓には勝てないぜ!」

残念だったな、とコハクは次々に矢を撃ち込んでいく。

「おらおらおら!」

「確かに…『ストーン』だけではどうしようもないですね…」

「ん?なんだ、諦めて降参するか?オレは優しいからな、今なら許してやっても…」

雨の如く襲いかかる矢の中、岩を盾に何とか堪え忍んでいるという状況で、柊は、くすりと笑った。

「いえ、ただ、何か勘違いしてらっしゃるようでしたからーー誰もストーンだけをコピーしたとは言っていません、よっ!」

「なっ…!!岩が飛んでき…」

ーーーーーーー

「……とりあえず、これでいいですね。…しかし、お相手がミックスコピーに気づいてくれなくて幸いでした…。近距離戦に持ち込まれたら勝ち目は無かったですね。」

ストーンスパークで感電し気絶したコハクを簡単に縛り上げ、柊は額の汗を拭う。

「…さて、コーパルさんは大丈夫でしょうか…」

To be continued…

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