路地裏にて

「いたた・・・・・・どうしよっかな。」
イゼルシュタットの路地裏、白いため息が消えていく。
何者かの奇襲にあったアタシは、ここから動けずにいた。

ちょっと前

「六芒星がシンボルの宗教がね、」
お父さんはチョキチョキと花がらを摘みながら話しだした。
「最近活動が活発になってきてるみたいなんだけど、」
「?お父さんは、宗教に興味はないと仰っていましたが・・・・・・。」
「僕は研究の邪魔をされたくないんだよ。」
チョキ。
「あーあ。うっかり一番きれいに咲いていた花を切ってしまった。」
「しおりにしてはいかがでしょう?」
「おっいいね。」
「(話しはそれてしまったけどお父さんの内心は穏やかではないはずだ。)」

お父さんの研究というのは主にフクレセウに関するもので。
その宗教の信者がフクレセウの地に足を踏み入れる可能性に危機を感じていた・・・・・・のかな。
宗教とフクレセウにどんな関係性があるのか、アタシには分からなかった。
でもお父さんにとってその宗教が敵だとするのなら、私にとっても敵なのだ。
任務として与えられた訳ではないけど、自分なりに調査してみよう。

というわけで偶然見かけた六芒星のアクセサリーを身につけた少女―まだ信者と決まってない―の後を追ってここまで来たけど。
ふっと角を曲がって行った先、見失ってしまった。
「念のためかけておいた硬化魔法でちょっとは防げたけど痛いなぁ。銃弾?」
消えた少女に呆気を取られ、奇襲。というわけ。
足は無傷だけと羽がこれではいつものように素早く動けない。
逃げ込んだ路地裏、見つかる前にどうするか決めないと・・・・・・。
「幸運の4。そうだ、あと4つ数えたらもっと暗いところに。」
夜目には自信があった。相手は多分銃だからそうすれば大丈夫!多分!
4、3、2、1・・・・・・とタイミングを計っていたその時。
笛の音。

「よばれて とびでて じゃんじゃか じゃん」
「うっにょわぁああ!?」
んもー!びっくりした!でも安心した。
「ピエレットさん・・・・・・で、よかった、です。」
どこからやってきたのか疑問に思う間もなく、
「おこまりのようね でももうだいじょうぶ ピエにおまかせ」
ピエレットさんはアタシの羽に手をかざし、なでるような仕草をしながら
「いたいの いたいの とんでいけー」
と、遠くに投げるポーズをして言った。
「えっ???」
こんなので治るはずが。
「痛く、ない。」
さっきまでじわじわと脈打つような痛みが嘘のように消えてしまった!
「すごいすごい!ありがとうピエレットさん・・・・・・。」
「どういたしまして どうしてわるいとりは いじわるするの でももうみつからない」
悪い鳥・・・・・・?ピエレットさんはいつも不思議な話し方をするね。
「さいごのしあげと いきましょう ひみつのぬけみち おしえてあげる」
ピエレットさんはアタシの手を引いて歩き出した。

暗い暗い路地裏 冬の日差しよ ピエたちを導いて

「そういえばどうしてピエレットさんはここへ?」
「はこばれるしらくも いくさきにはきっと もくてきがあるわ」

雪解けが待ち遠しい4つの葉 どうか暖かき春の訪れを

レールすらひけない狭い路地。何度も何度も角を曲がって。
「着いた・・・・・・!」
先ほどと打って変わって広い大通りに出ることに成功したのだ!
安心した気持ちが大きくてすっかり忘れていた。
あそこで何をしようとしていたかを悟られる訳にはいかないの。
「本当に、助かりました。ありがとうございます。でも・・・・・・あそこで会ったことは。」
「ひみつ」
「・・・・・・すみません。」
アタシたちは「またね」とあいさつをして、抜け道へ至る入り口を離れた。

「あのこのきぼうは あかいひかり」
「これは ピエだけしってる ひみつ」

「こちら『ロリータ』目標を見失ってしまいました・・・・・・。」
「笛の音による視野を遮る魔法の一種と思われ・・・・・・。」

「もしも鍵となる物を見つけられてしまったら僕の研究は台無しになる。」
「フクレセウ奥地・・・・・・一体なにが隠れている?」

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