【捏造SS】デイジー

……××××年イゼルシュタット中央講義堂にて、フクレセウ壊滅は旧体制の暴走とし、新体制は軍幹部らの粛清を以って責任処理するとの判決を下した。
その中には当時急な時勢により特進し配属された若き司令官も含まれており、この一辺倒な判断には同志からの反発も少なくなかった。
「なぜアイツは…なぜ友は死ななければならないんだ!」男の抗議が講堂に響く。男は旧軍にて衛生兵として働いていた。同部隊の司令官にはよくしてもらっていたという。その人の好い司令官は、明日未明戦犯の一人として処刑される。不条理だ、無罪だ!と男は続けざまに叫ぶ。
その異議は聞き取られなかった。民主的決定によって、その処理は続けられた。……

「あの革命が正義だったとは、思えない」
初老は手の中で小さな部品を弄びながら呟く。山向かいの街から来た少女は質問する。
「そのおじさんは、本当は悪い人だったの?」
答えることはできない。
「さあね」
初老は口だけで微笑する。
「それより、芸術的な話をしよう。君の彫刻を見せて欲しいんだ」
一瞬間を置いてから、少女は返事をする。それから氷を出し、花の形へと削っていく。その花は平和の象徴だ。
「ああ、平和が一番だ」
そう言って初老は目を細めた。

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