街に住まうモノ

怖い大人から逃げていたら、今まで来たことの無い場所に着いていた。
「…ここは、どこなの?」
辺りを見渡すと、少し小さな[タテモノ]があった。そして、その前にいる[だれか]と目があった。
「…はじめまして。見ない顔だね」
「…はじめまして。ここ…どこなの?」
「…?{チトセヤガスリ}だよ。もしかして…迷子?」
「…たぶん、そう」
(帰り道がわからないとき、{マイゴ}って言ってた…)
いっつもいるところから、すごくはなれちゃったから…わたしは、{マイゴ}、だと思う。
(どうしよう、早く帰りたいのに…)
わたしがうつむいていると、[だれか]がとつぜん話しかけてきた。
「…これ、いる?」「…?」

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差し出されたのは、前見た子どもたちが食べていた茶色いぼう付きの[何か]。
「…悲しい時は、甘いモノを食べれば元気になれると思って」
[それ]を受け取り、そっと口にはこぶと、
(…これ、なに?)
口の中で[何か]が広がって、不思議な感じがして…
(これが、子どもたちが言ってた、[甘い]ってこと、[おいしい]ってこと、なの?)
「…良かった、笑ってくれた」「…え?」
「子供は笑顔が一番、だよ」
(…{エガオ}?)
…この姿にかわれるようになって、皆みたいに{エガオ}になりたくて、頑張って…
(ちゃんと{エガオ}、できたのかな?)
「…さてと、もうすぐチャイムが鳴る時間だ。
きみのお家は何処にあるの?」
「………」
「…じゃあ、近くに何がある?」
「…お山が、ある」
「…なるほど、廃坑の近くだね。案内するから、着いてきて」
「…ありがとう、ございます」

🍭🎀🎀🎀🍭🎀🎀🎀🍭

(そういえば、あの子…{彼女}にそっくりだったな…)
先日会った迷子の少女は、1年ほど前…この街を去った一家の娘と瓜二つだった。
(たしか…[ドッペルゲンガーに会ってしまった]って言ってたっけ…?)
自分にそっくりなドッペルゲンガー、出会ったら死んでしまう…
(良くある都市伝説、なんだけど…この街では、そんなモノが”在る”から、一概に否定出来ない)
この街は、そんな不思議な場所、だから…
(あの子も、”そんなモノ”、なのかな?)
…場所もそう、だけど、
(ぼくも、”そんなモノ”に含まれてしまうから…)
…まぁ、でも
(ぼくは、ぼく自身や、誰かが傷つかなければ…)
どんなモノが、どんなことをしていても、
(別に、良いんだよ)
ただ、毎日を…平和に、平凡に、平穏に過ごしたいだけ。
(それさえ叶えば、幸せだから)

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