【小説】デザイア•シード 第3話 「2人だけの世界で」

「ひーまーだーよー」 
 ごろりと寝返りを打ちながら、退屈そうな顔で欠伸をするサラセニアさん。
「わがまま言わないでください。何もないところなんですから」
 そのすぐ隣ではカイエンさんが願いの実をまじまじと見つめながら、そんな言葉を呟いた。
「はあー…どうしてこんな事に」
 冷たい光が微かに足元を映す牢屋の中で、私はそっと目を閉じる。バラバラに散ってしまった、あの3人は無事だろうか…
 この場にいない人達がここに放り込まれてこないことを祈りつつ、静かに横になった−

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「…不味い事になったね」
「ええ……」
 確認し合うように互いにそんな事を呟くと、意味もなく頭をかく。静かに息を殺し、暗闇の中に身を預けながらどうすべきかを考える。
 …時間はあまりかけたくない。かかればかかるほど、どんな行動をするにもリスクが高くなっていくからだ。しかし、かといって容易な案を出したくはない。あと先程から退屈なのか度々動こうとする緑目くんを押さえつけているのが疲れてきた。
「とにかく、ここで一番権力を持っている人と会って話をつけるしかない」
「でもどうやって?」
「それは……」
 言葉に詰まり目を伏せる。
 どこにいるかも分からない人物を探し出すのは困難を極める。ましてや、お尋ね者となっている今は普通にこなすより難しい。
 周囲を見渡し緑目くんと三角帽子さんに合図を送ると、建物の影に隠れながら移動する。足下さえ見えない暗闇は身を隠すのには最適だが、こうも暗いと私達も動きづらい。

 そもそもの原因はこの突然の漆黒だ。情報収集のために訪れたこの街で、一泊して目覚めたらこんな状況。更にはその原因が私達植物園の連中だと決めつけ、身柄拘束に打ち切ったこの街の連中は勉強もしたことのない底辺ばかりなのではないだろうか。
「不意をつかれて逃亡の身とは情けない…」
「でも、こっちから打って出ないと全滅ですし、捕まったアイリーさん達も助け出せないですわ」
「そうだな…その通りだ」
 ならば目指す場所は一つ。
「あの中央で構えている高い塔…あれの最上階まで行けば偉そうな人がいると思わないか?」
 私がそう問いかけると、2人も大きく頷く。そうと決まれば早速実行だ。時間は1秒たりとも無駄にはできない。
 一段と光り輝く塔をキッと睨み付けると、一直線に駆け出した。

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「…大分近づいてきたな」
 ここまで奇跡的に誰にも見つからずにやってこれた私達は、目標を目前に捉え息を整える。
「も、もう疲れたよ〜」
「我慢よ、グリーン君。もうちょっとだから」
 と、三角帽子さんが緑目くんをなだめる。あの子はまだまだ子供だからな…あまり長い間連れ回すのもかわいそうだ。
 だが、だからと言って置いていくわけには…

「やっと、見つけたよ。悪い子猫達」
「…!」
 はっと気がつき咄嗟に身をよじって水の槍を交わすと、2人の手を強引に引いて建物の影に飛び込む。
「い、いきなりか…!」
 恐る恐る壁の中から顔を覗かせると、そこにはホウキにまたがり宙をふよふよと浮く女の姿があった。
 どうしたものかと考えていると、向こうから声が上がる。
「私はエンフィア!君達は昨日この街に来た方々だね?少し話をしようじゃないか」
 話…話ね……いつでも魔法が撃てるように構えているくせに、よく言うな…
「どうします、チナシーさん。あの方、どうも友好的って感じではないですけど…」
「…どうもこうもない。なんとか撒いてこの場を離れる。緑目くん、協力してくれるかい?」
 私がそう聞くと、緑目くんは「うん」と返事を返す。
 よし、とペンを取り出しホウキ魔女の目につかないように移動を開始する。
 周りが見えない分、足音を悟られないように慎重な足取りで地に白い粉を付着させてゆく。勘づかれたら終わりだ。スピードが重要になってくる。
 そうこうしている間に、どうやら緑目くんとホウキ魔女の会話が始まったようだ。
「ね、ねえ!助けて!ボク本当はこの人に捕まってるんだ!」
「捕まっているー…?嘘は良くないよ」
「本当なんだって!ほ、ほら、この左目が閉じっぱなしなのも、この人にたくさんぼ…暴力を…」
 …ああ言えと言ったのは私だが、側から聞くとかなり酷いものがあるな。あとで謝ろう。
 会話のドッチボールを聞き流しながらもなんとか作業を終えると、術式展開の機を伺う。
 もう少し…もう少し近づけ…あともうちょっとで……
「…で、そこの君は何をしているんだい?」
「…!」
 しまった、気付かれていたか!だが…そこまで緑目くんに…いや、魔法陣の範囲に入り込んでしまえば関係ない!
「リバクルー発動!!」
 私が声を上げると同時に魔法陣へと魔力を注ぎ込むと、床が微かに輝き術の発動を伝える。
「ぬ、ぬおおおああ?!!!」
 リバクルーは魔法陣内の重力をひっくり返す魔法。普段こんな使い方はしないが…まあいいだろう。
 私は遙か彼方空の旅へご招待した彼女を目線だけで見送ると、緑目くんを抱えてどう見ても怒っている三角帽子さんの元へ戻る。
「ちょっと、どういうつもりですか!こんな小さな子を危ない目に遭わせて!!」
「仕方ないだろう?反転魔法を受けても無効化できる緑目くんにしかできない事だったんだ。子供だから油断もしてくれただろうし…」
「そういう問題ではありません!!第一、この子に何かあったら園長になんと言ったらいいか…」
「も、もういいよ〜!ボク、怖かったけどみんなのためだもん!ほら、早く行こうよ!」
「ぐ、グリーン君…」
 緑目くんの言葉に涙を流しながら緑目くんの頭を撫で続ける三角帽子さん。なんか…私が悪いみたいじゃないか……
「ほ、ほら。時間はないんだ。泣いてる暇などないぞ。移動だ移動」
 いまだ泣きじゃくり緑目くんを離さない彼女ごと抱えると、この場を後にした。

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「着いたぞ」
 首が痛くなるほど高い塔の目の前で、ポツリ呟く。てっぺんは暗闇のせいで見えないが、どうせ明るくてもはっきりとは確認できないだろう。そのくらいはある高さだ。
 塔の周りをぐるぐると周回していると潜り込めそうな窓ガラスを発見したので、強引にカチ割り中へと侵入する。
 中はどこもかしこも眩しいくらいに輝いていて、地面も壁も天井も全てが大理石で埋まっていた。
 外の建物との違いに「格差が酷い街なのか…?」と考えていると、上へと続く螺旋階段から誰かの足跡が鳴り響き咄嗟に身を隠す。
 鳴り響く足跡が徐々に近づいてくる。面倒だからこのまま気づかずにさっさと何処かへ消えてくれないかな…という願いはあっさり打ち捨てられた。
「おい、そこに隠れてんだろ?出てこい」
 バレバレなら仕方ない…と、柱の影から姿を見せると、そこには片目だけでこちらを睨み付ける女がいた。
「1,2…3人か。よくとまあここに入れたな」
 そういうと女はゆっくりとこちらに向かって歩み出す。
「こ、こっちに来るよ?!」
「どうしましょうチナシーさん。ここでは逃げ場が…」
 慌てふためく2人を見て「はぁ…」と息をつく。こういう時こそ冷静な判断が求められるものだが、どうやらこの2人はそういう事が苦手なようだ。
 となれば私がまたどうにかするしかないか。とは言え私を含めて全員戦闘向きではない。そういうのは園長や園芸大好きくんの仕事だからな。こんな突然でなければ私もそこそこ対処できるのだが……
「考え事か?大方隠した月のしまいどころに悩んでいる…そんなところか?」
 いや、全く違うが…
「図星だろというような顔をされても惨めになるだけだぞ。やめておけ」
「なっ…!」
 私の言葉に身を引きたじろう女。そんなにショックか。まあ私なら恥ずかしさのあまり自害の道を選ぶが。
 なんだかこのまま横を素通りできそうなので試しに歩いてみると、左腕をガッチリと掴まれた。
「…離せ」
「断る」
 固く握られた手は簡単に振り解けそうにない。やれやれ、仕方ない。
 何もない空間をジッと見つめそこから鉱石を生み出すと、勢いよく女に向かって発射する。
 初めからこうすれば良かったか…と思ったのも束の間、何故か鉱石は方向をぐるりと変えて私の方に突っ込んできた。
 何故…?と考える間もなく次々と私の体にのめり込んでくる。
「ぐうっ!」
「チナシー!!」
「チナシーさん!!」
 くそ、こいつまさか……
「そう、ご名答。私はな、エスパー持ちなんだよ。今度は当たっただろ?」
 やはりそうか。私とは完全に相性が悪い能力を持っていたとは…これはもうどうしようも……
 と諦めかけた時だった。ふわりとした風が頬を掠めたかと思ったら、バゴォーンという衝突音と共に掴まれていた手が離れた。
 わけも分からず視線をずらしてみると、三角帽子さんが杖を持って私の前に立っていた。なるほど…そういうことか。
「すまない…助かった」
 そう礼を言うと彼女は「大丈夫?」と聞いてきたので「問題ない」とだけ伝える。

「…気絶しているな」
 吹き飛ばされた女の元に近づき様子を確認する。
 完全に不意を突いた一撃だったからな…受け身も取れなかったのだろう。彼女もかわいそうだが、もっとかわいそうなのは…
 ちらりと視線を三角帽子さんの方へ向けると、緑目くんが心配そうに見つめる中案の定彼女は暗い顔をして俯いていた。
 彼女が極力魔法を使いたがらないということを植物園の人は全員知っている。彼女は理由を言わないが、誰かを傷つけるのが嫌なんだろうというのは誰にでも分かることだった。それなのに使わせてしまった…
「本当に申し訳ない。だが…ありがとう」
 聞こえるかどうか分からない声を零し、長い長い螺旋階段を一歩ずつ登っていく。
 …もう戦いにはならなければいいが……

 暫くして螺旋階段を登り切ると、エレベーターが見えたので周囲を警戒しつつ乗り込むと一気に最上階まで登り詰める。
 ピンポンと単調な電子音を響かせてエレベーターの扉が開くと、てっぺんだと思われる部屋に到着した。
 あまりにも暗闇が濃すぎて何も見えないが、明かりを点けるものもどこにあるのか分からないため、とりあえず声を出してみる。
「ここに誰かいるか?いるなら返事をして欲しい!」
 柄にもなく大声で呼びかけてみたが、何の反応もない。まさか誰一人いないのか?何のための最上階なんだ…
 疑問で首を捻ってみるが何も思いつかない。考えるだけ時間の無駄だ。
「2人とも、ここには誰もいないようだ。無駄足になってしまったが別の場所を捜索…」
 とまで言いかけてようやく気がついた。
 妙に…静かすぎはしないか?
 そうだ、三角帽子さんはともかく緑目くんがこんな空間でずっと黙っている訳がない。嫌な予感がして2人の名前を呼んでみるが反応がなく、帰ってくるのは静寂だけ。
 ドッドッ…と心拍が上がる。こみ上げてくる恐怖を拳で握り潰しながら、目を凝らして注意深く周囲を見渡す。
「あれは…なんだ?」
 ポツりと点のような光が微かにだが見える。
 足を幾度となく何かにぶつけながらも謎の光の前まで近づき手に取ってみると、何かの生き物である事が分かった。
 これは、ここの住民が皆持っているという光源…名前は確かルミエベテと言ったか。蜂の姿のこいつは酷く傷つき今にもその灯火を消しそうだが、こいつの主人はどこにいるんだ…?

「に…げて……」
「?!」
 今の声は緑目くんか?!確かこちらの方で声が…
 背後から聞き取った音を頼りに手探りで探してみるが見つからない。そもそも暗すぎるんだ。
 私は適当な数の鉱石を生み出しそれらに光の属性を付与させると、空中にバッとばら撒いた。すると先ほどまで自分の手すら見えなかった周囲がようやく鮮明に映るようになる。
 そうだ、初めからこうしていれば良かったんだ。こうしていれば…
 だが、私はすぐに明かりを灯した事を後悔した。自分でも驚くくらいに取り乱し、地べたに転がっていた緑目くんの元に駆け寄る。
 痛ましい…身体中が傷だらけだ。幸いどれもかすり傷程度で済んでいるが…誰がこんな事を……

「誰よ…せっかくいいムードだったのに明かりなんて点けたのは…」
 聞き覚えのない声に振り返ると、そこには蜂のような少女が三角帽子さんの首根っこを掴んだまま立っていた。
 なんだ?何をしているんだあの少女は。一体誰の体を持ち上げて…
「返すわよ、この人」
 ポイっと放り投げられた三角帽子さんが私の足元へと転がってくる。彼女も緑目くんと同様の怪我を身体中に負っていた。
 わけも分からず三角帽子さんの元へと近寄り腰を落とすと、彼女は遠くを指差し「あの人…助けて上げて…」と掠れた声でそう言った。
 指差す方を目を凝らして見てみると、蜂の少女の奥の方にも誰かが倒れているのが分かった。顔は見えないがあの人も、まさか…
 三角帽子さんを楽な体勢に移し立ち上がると、腹の底で煮えたぎる感情を抑えて口を開く。
「お前だな?やったのは」
「ええ、そうよ」
 少女は妖艶な笑顔で言葉を返す。
「何故、こんな事をする。事によっては…いや、事によらずともお前を許す事はできない」
「何故って…アタシとあの人の邪魔をしたからよ。それ以上に何がある?」
 あの人と呼んだ奥にいる人を指で指して淡々と答える少女。元からそういう性格なのか、それともそうでなければ…異常だ。
 顔を見れば分かるがおそらく話は通じない。それ以上に…もう私自身が我慢できない…!
 空中にばら撒いた鉱石に様々な属性を付与させ、戦闘態勢を取る。ああいう悪い子は躾が必要だ。
 私の敵意を受け取った少女は無言のまま一本の傘を取り出すと、バッと広げる。
「そんなので…防げるつもりか!!」
 私が腕を振り落としたのを合図に、次々と弾丸の雨が少女へと降り注ぐ。
 これで少しは反省しただろう…と思ったのも束の間、全身に切り裂かれるような痛みが走る。
 よろけながらも見てみると、体のあちこちに細い針が突き刺さっていた。
 この針…パラソルの攻撃ではない。あの少女特有のものだな。そしてあれだけの攻撃を全てあの傘で防ぎ切っている…まあ、通常の10倍近くある傘をパラソルとは言わないが。
「ねえ…本当に邪魔しないでくださる?アタシはこの人と…ロロイリス様とずーっと2人だけでいたいだけなのよ。せっかく邪魔だった月も傘で隠したのに…」
 少女は不満げに呟く。
 隠した…だと?それもその理由が誰かといるのに不要だから消したと言うのか。私たちはそのせいで酷い目に遭ったというのに…迷惑でしかない。
 だが、これではっきりした。この少女…
「お前、変な実を食べただろう?」
「食べたわよ。それが何かしら?」
 やはりそうか…ならば仕方ない。あまりにも気味が悪いので使いたくなかったが、これしか手が残っていないようだ。
 懐から注射器を取り出し腕にぶすりと突き刺すと、身体中の血が燃えたぎる感覚に歯を食いしばる。
 開花…か。どう考えても体に良くない感じがするが、これならいけそうだ。
 手を伸ばし鉱石を一点に集中させると、粘土のようにこねくり回しながら形を型取っていく。
 四肢の手足に鳥籠の頭…こだわりがなかったので少々歪になってしまったが、ゴーレムの完成といったところかな。
 突如現れた石の魔人に、少女は口を開きぽかんとしている。正気ではないだろうが建物内にこんなものを作られては、そんな反応をしてしまうのは仕方ない事だ。
 私はゴーレムを操り腕を風切る速度で振り出させる。
 少女は慌てて傘でガードするがメキメキと音を立てて粉砕された傘の破片と共に壁へと衝突し「ロロ…イリス……さ…ま」と呟き気絶した。
 はあ…と大きく息を吐いたのち「別にゴーレムでなくとも腕だけで良かったな」などとどうでいい事を思った。
 そうだ…忘れるところであった。ロロイリスと呼ばれた人の様子を見なくては。
 上手く動かせない体をどうにかして突き動かしてゆっくりと近づいていくと、まだ顔も見えない距離からただ一言だけ声が聞こえた。
 その声と言葉を聞いて私は…それ以上歩みを進める事は出来なかった……

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「ほんっーーーーとにすいませんでした!!!」
「いやいや、気にしてないから本当に。月も元に戻ったしね」
 頭を深々と下げるハニーさんに顔を上げるように促す。
「この子が今回の犯人ですか?想い人のために暴走したって聞きましたけど…いやぁー青春ですね。ま、今回僕は関わっていないので関係ないですが」
「好きな人のためにちょっと頑張りすぎただけなのですよね?いいなぁ〜サラもそんな恋とかしてみたいのです!ま、今回サラは関わってないから関係ないのですけども」
「そそそそ、そういうのじゃないのよー!!!でもごめんなさい!!!」
 顔を真っ赤にして泣き崩れるハニーさん。うーん…なんか気の毒。
 気の毒と言えば…
「すまなかったね、3人とも。私達が捕まってしまったばっかりに辛い目に遭わせてしまって」
「ううん、大丈夫。みんな無事で良かったよ!」
「そうね。あんまり気にしないで」
 と、グリーン君とエルバさんは笑みを見せる。
「チナシーさんもありがとね」
 少し皆から離れた所にいた彼女にも声をかけたが、無反応だ。
 もしかして薬の副作用でもあったのか?とか人を傷つけてしまったことを悔やんでいるのかな?と思いエルバさんに尋ねてみたら、どうやら違うらしい。
「しばらく1人にしてほしいとの事らしいですよ。そっとしておいてあげましょう」
「そっか…」
 相当辛かったのだろう。何が辛かったのかは本人にしか分からないけど…
 しかし彼女のことをいくら考えても仕方ない。私は私にしかできないことをしよう。

 その後もう一泊することだけ決めた私達は、各々情報を収集するが手掛かりは何も掴めず…結局朝を迎えて次の街に移動する事になった。
 住民の疑いも無事に晴れ夜空が綺麗な町と別れを告げる。見送り人は誰もいなかったが、植物園の誰もが悪い顔をしていなかった。
 …ただ1人を除いて。

 そう、ずっと彼女は…チナシーは考えていた。ただの一言が頭の中をぐるぐると廻り続ける中で、どういう意味だったのか分からなくなってしまった彼女は、次の街に着く頃には考えを伏せてしまった。
 聞き覚えのある声で発せられたその言葉の意味はなんだったのか…それは今は分からずとも、その内分かる日が来るかもしれない。

「すまない…」
 という、その言葉は。

次回、第4話
「渦巻く欲望」

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