【小説?】掌編にも満たないそれぞれ②

主に過去にツイッターでタグを使って書いていた短文まとめ。
 
 
不運は重なる。
人混みの中、訝しげに細められた三白眼と目があった瞬間、思わず脳裏にそんな言葉が過る。
隠れるには遅すぎる。見開かれていく両目を背に俺は路地に逃げ込んだ。
「……お前!? おいっ、待ちやがれクソガキッ!! 今度こそ逃がさねえ!」
最悪だ。よりによってこんなときに出会すとは。
(ロッソ、バレット)
 
 
大地が削れ血煙が舞う荒涼とした世界の中心で、その発生源たる戦闘狂い共は互いの命をギャリギャリと抉り削り落としながら、ともすれば無垢な幼児にも見える笑みを浮かべて愉しい愉しいと己が得物を振るいあう。
不可思議な力によって閉じたそこは、実質ふたりの世界であった。
(クロイツ、ルームガーダー)
 
 
この植物園の職員たちは皆優しくて研究熱心だ。そして皆、どこか狂っている。
「やあ、カイエン君。おはよう、今日も良い天気だね」
「あっ、おはようございます。えーと……」
「園長の、イオンだよ」
「そうでした、園長!すみません」
いやいや、と穏やかに手を振って去っていく園長の背を見送る。
(イオン、カイエン)
 
 
ここはヒンメルトロイメル。天と地を繋ぐ、折れることなき憧れと祈りの塔。これまでもこれからも永久に永久に。
「(……あ)」
黒に蝕まれた世界の向こう、遠くアルトリートの歌声が聞こえる。
「(そうだ、ここはヒンメルトロイメルで……僕は)」

「生きて、る」

ぱちん、と泡が弾ける音がした。
(アルトリート、(エメンタール))
 
 
「僕は神だよ」
何てことないように飄々とそう言ってのけた女に、俺は思わず愛くるしい少年の演技も忘れてその顔を睨みつけた。
しまったと思い瞬時に無垢な笑みを繕ったが、俺を見る女のその大きな両目が純粋ゆえに厄介な子どものそれと同じ好奇心で輝いて、口端がひくりと痙攣した。
(ロッソ、トルテル)

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