【小説】ハロウィン2017(7)

「ユー達のハロウィンにはね 刺激が足りないのさ!!」
そう言い放った魔女は忽然と姿を消す。
「…!上、上だよ!」
雪兎の声で見上げると先程の魔女が空中に浮いていた。
いや、よく見ると何かにぶら下がっているようにも見える。
「はいはい皆さんご注目!!ここでタネ明かしタイムだよー!!」
すると今度は排水溝から何時ぞやの蜘蛛が溢れ出てきた。
その光景は実におぞましく、黒い水が噴き出したようだった。
ついさっき聞こえた悲鳴もこの蜘蛛が原因か、しかしここには悲鳴を上げる間もなく顔を真っ青にして倒れた女性がいた。
「ひ…ひぇ…」
「ちょ、ちょっとアリスさん!?」
「しょうがないですね、雪兎はアリスから離れるな。ポチには住民と観光客の避難を任せる!多分親玉蜘蛛がいるだろう広間は危険だ、駅前に誘導しろ!分かったな?」

「実は…ユー達が朝に騒いでいた蜘蛛の糸は ミーが犯人さ ミーは蜘蛛の魔女なのサ!んっ!?」
警察の働きで中央広場から人が離れ始めている中でも彼女は話を続けていた。
だが自分の正体を明かした瞬間、突然光の矢が飛んできたことで言葉が止まった。
「犯人探しの手間が省けて助かったよ魔女さん」
話すのに夢中で気づかなかった…目の前に浮かぶ男の存在に。
「ふーん なんだかユーからは普通じゃない臭いがするねェ… ミーを探してたの?」
「あぁ数日前からな まさかハロウィン当日まで雲隠れするなんて思っていなかったよ でもこうして現れてくれたんだ、良かった良かった」
しかし犯人が魔女だなんて、ハロウィンには人ならざるものが集まると言われているが あながち嘘ではないんだなと楽しそうに言うリエン。
「ハハハ 蜘蛛だけにか?でもユー 目がぜんっぜん笑ってないよ」

「当たり前だろ 街を汚されて怒ってるんだからな!!」
腕を振り上げてみせるリエンに警戒して構えたハロウ。
「………?」
「上だ蜘蛛女!サンダーボルト!」
すると頭上から雷が降り注いできた。
通常のサンダーボルトとは違って幾つも降り注いでくる雷、を器用に避け切る魔女。
これには少し驚いたリエン。
しかしそれが隙となり、中央広場方面にハロウを逃がしてしまった。

「無駄にカッコよくキメるんじゃなかった…!!」
慌てて追いかけるリエンに
「ユーだって見たんだろー?蜘蛛の糸で真っ白になった街の姿をー!そしてその蜘蛛の糸がすぐ消えちゃったのも!」
と魔女が叫び語る。
「実はあれさー消えたんじゃないんだー 見えなくしたんだよ!」
なるほどな、さっきから猿のように何かに捕まって動くのは 見えない糸に掴まっているからか。
少しずつハロウの手の内が見えてきたリエンが調子に乗り始める。

「だったら速度を上げる事が出来る私の勝ちだな魔女!お前を捕まえた暁には、街の掃除をしてもらうからな!!」
確かにハロウの移動方法には限界がある。
あっという間に追いついてみせたリエンがハロウに飛びかかろうとした、がその時
「…あ?あれ…?」

「アーハッハッハッハ!!ユーってば案外おバカなんなんだね?ミーが考えなしに追いかけっこする訳ないじゃん」
「嘘だろ!?この高さにも蜘蛛の巣が張ってあったのか!?」
体を動かす度に糸が絡み付いてくる、あっという間に白い毛玉にされてしまった。
「エサを捕まえるのには頭を使うのさ 最近のエサは頭が良くてねー」
see youと言い残し広場に向かう魔女。
「(上手く隠れているであろうアイツと早く合流しなくちゃね〜)」

「何やってんだ鶏!!」
鶏とは自分のことだろうか…自分の姿が見えるヤツなんて数える程しかいない。
見下ろしてみると案の定その内の二人、ビーストリヒとライロがいた。
「ごめーん!調子に乗りすぎたー!」
「お前の悪い癖だー、そこで反省していろ!後は俺達が何とかする!」
そう言うとビーストリヒはライロと共に広場へ駆け出した。
「って、オーイ!!助けてくれねぇのかー!?」
日が沈み始めて気温が下がる中、空中で放置されている自分の状況に涙が出そうになる。

「くそ〜…冷えてきやがった…帰りたい 寒いの苦手なんだ、あんま期待すんなよ」
「そうか、だが嫌という程体を動かす羽目になる予定だ 寒い点は安心しろ。」
逆に期待してるぞと念を押されてしまった。
余計帰りたくなったが
「ん、魔女だ」
遠くに移動中の魔女が見えてしまった。
どうやら中央広場はすぐそこらしい。

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