【小説】ハロウィン2017 (6)

「HappyHalloween!!」

アナウンスでパレードが始まった。
吹奏楽団の演奏とともに仮装隊が大通りを歩き流れていく。
仮装隊の中にいる【ジャック・オ・ランタン】と呼ばれる南瓜のお化けがお菓子を周りにバラまいたり、観光客に向けて投げたり、そのお菓子を観光客が投げ返したりと初っ端から盛り上がっている。
「異国の祭りにこんなのがあったな」
トマトを投げ合ったり、一方的に豆を投げつけたり。
そんな祭りが。

「ビーストリヒさ〜ん!」
タタタッとかけて来たのは雪兎。
「ぅん〜〜ポチィィィィ!」
その後ろを奇声を発しながら来るのはリエン。
普段の姿の時は、大体の人には見えていないからといって、見えてる人もいるのだから恥を知るべきである。
いい歳した大人なのだから。
「うわ、キモ……」
ビーストリヒの素が口からこぼれる。
なるべく周囲から不審に思われないために身についた塩対応。
まともに相手をしたくないが、無視をするのは流石に可哀想だというビーストリヒの優しさだった。
リエンも分かってはいるのだが、精神的に来るものがあるらしく、しょぼくれてしまった。
「リエン様も今日のハロウィンを楽しみにしていたんです、あまり冷たくあしらわないでください…お願いします」
どんな時でもリエンの味方をするアリスに溜め息が出た。

「うん?もしかしてリエンさん、ボク達に蜘蛛探しを押し付けて ハロウィンを楽しむために抜けがけする気じゃ…うぎゃっ!?」
文句を呟こうとした雪兎が変な声を出す。
見ると何かが顔に落ちたらしく、自身の額を押さえていた。
「私は常に360°あらゆる角度から物事を見ているからさ、本体である私は遊びながら仕事出来るんだよね〜 羨ましいだろ〜?お前達にはできない芸当だろう?」
「むむむ…」
大人気ない。
「雪兎君大丈夫?」
「多分…?大丈夫 でもバチッていった…」
「あら、怪我をしていないか私にも見せていただけますか?」

「アリスは将来良いお母さんになるな 面倒見られたいわぁ」
「いつも面倒見てもらってるだろ」
「そうだった」
ふと、視線を感じ周囲を見渡すビーストリヒ。
「どうした?」
「誰かに見られていた気が」
まさかぁ〜、気にしすぎじゃないの?なんて言われた。
見えない私と会話してるから多少は他人に見られてるかもしれないしと付け加えて。
「まぁそうだな」


「ヒヒッ まぁそうだね、そのまさかだ」
突然真後ろから聞き慣れない声がして振り返る。
そこには逆さまに浮んだ、魔女帽子を被る猫目の女性がいた。
「初めまして、ミーは遠い遠い森から着た魔女でーす!この街のハロウィンの噂を聞いてやってきたんだけどね〜」
自己紹介を続ける彼女。
「きゃああああ!」
しかしその直後、人混みの中から悲鳴がした。
「規模が大きいだけでハロウィンって感じがしないから、特別にグレートでスペシャルでファンタスティックな…」
パレードで人が集まっている、パニックなんてあっという間に広がった。
「本当のハロウィンってやつ 教えてやる!」
魔女が言い終わるのと同時に、至る所から蜘蛛が湧き出て来た。

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