【小説】ハロウィン祭2017 (4)

「こちら、ジークフリートからお伝えします 見てください!ご覧の通り街中が 糸で真っ白な状況です!数日前から蜘蛛の大量発生が確認されていたとの事ですが、過去にこのような現象は記録されておらず…」

「はわわわわ…」
朝のニュースはどの局もジークフリートの怪事件で持ちきりだ。
明日はハロウィンだというのに突然のアクシデントに街は大混乱である。
「絶対電車も混んでるよぉ~」
今日も教会にお邪魔する気の雪兎、まだ学校に行く歳でもない彼にとって 教会が学び舎のようなものである。
よっこらせっと小さなリュックを背負い、テレビに暖房、火元をチェックし部屋を出る。
「いってきまーす」
鍵を閉め外に出る、が そこはニュースで見た光景とは違い 普段通りの街並みが広がっていた。
「…どういうこと…?」

「遅れた分、早く取り戻さないと」
「そうだな しっかしまぁ、今朝の怪奇現象なんだったんだろうな?」
今日も朝から働くアリェーニとライロ。
今日中に物資を運び終えないといけないため行ったり来たりと忙しない中、今朝のニュースについて話している。
「準備期間中にやたら目に入った蜘蛛と何か関係があるんですかね」
「もう蜘蛛はいいわ俺…」
先日踏み潰したあの感触を思い出してテンションが下がる。
「あ、モチベーションは下げないでくださいね!」
「うおっ!」
アリェーニからダンボールを手渡される。
まぁ俺達が考えても仕方ないよな、と会話を終えて再び作業に集中する。
「ちょっといいか?」
「どぅわっは!?」
ダンボールの横からヌッと現れたビーストリヒに、ビックリしたライロがバランスを崩す。
「もう!ライロさんしっかりしてください!」
「今のは俺 悪くないだろ!」
「…」
「今のはビーストリヒが悪い」
「はいはい悪かった」
「そんで?何か用か?」
気を取り直して本題へ。
ビーストリヒに限らず、今朝の怪奇現象で警察が厳重警備兼聞き込みで動いているらしい。
あれ程騒がれたにも関わらずあっという間に消えてしまった糸と共に、住民の熱も冷め切ってしまったためだ。
「都会人の適応力にも困ったもんだな!」
「流行に乗るだけ乗ってすぐ飽きる、嫌な習性だがな」
「あのぅ…私達に用が…あったんじゃ」
アリェーニの言葉でやや脱線気味だったのを引き戻される。
「そうだな、ここじゃあ仕事の邪魔になる。お前らの休憩所に移動しようか」
警察の聞き込みなんて経験したくなかったと、とぼとぼ案内する2人。

「お前達に聞きたいのは他でもない、今朝の事件についてだ」
ゴクリッと喉が鳴る、別に悪いことをして事情聴取されている訳でもないのに 何故か緊張してしまう。
「そう固くなるな」
へへへ…と苦笑いをし、なんとか体から力を抜く。
「最近蜘蛛が多く目に付いたと思うが お前らはどうだった?」
「確かに作業中はよく目にしましたけど、なんというか疎ら?というか」
「虫の大量発生っていえばもっとこうわらわら群がっているイメージだな」
「なるほど」
少しばかり沈黙し、一呼吸置いて口が開く。 
「俺も先日、スイートストリートの扉周辺で大蜘蛛を見たという声を聞いている。しかし、街中で蜘蛛を見たという情報が少ないんだ。何が言いたいか分かるか?」
ようは此処、扉の周辺が蜘蛛の発生源ではないかと踏んでいるらしい。
「とは言ってもな 大蜘蛛なんて見なかったしな」
「はい、よくいる小さいサイズのなら見ましたけど」
「…そうか」
さては信じてないな?と返すと「いや別に」と薄ら笑いをして立ち上がるビーストリヒ。
とりあえず大蜘蛛を見たらすぐ連絡するように、そう言って彼は去っていった。
「親玉探しねぇ」
「お菓子の品質を下げかねないし、早く解決して欲しいですが」

朝の騒動はまるで嘘のように、いつもどおり活気づくジークフリート。
次第に日は沈み、街灯が連なる街並みが綺麗だ。
さぁ 明日はいよいよハロウィンである。

Twitterでこのページを宣伝!Share on twitter
Twitter

コメントを残す