【小説】ハロウィン祭2017 (3)

「リエン様遅いですね…」
街の様子を見てくると飛び出したリエンの帰りを待っているのはアリス。
お昼になっても帰ってこない彼に表情を曇らせ始めていた。
彼の付き添いに雪兎を送り出したのだが、案の定祭りの雰囲気に当てられてしまったのだろう。
子供に大人の面倒を任せている時点でおかしいのだが それくらい信頼されている雪兎と、それくらい信頼されておらず、頼りないリエンなのである。

「「ただいまー!」」
教会の裏口から小さな子供と大きな子供が元気よく入ってきた。
「おかえりなさいませ、疲れているところ申し訳ありませんが 予定より帰りが遅くなった理由を聞かせてください」
「リエンさんにいっぱい買ってもらいました!」
雪兎がそう言いリエンを見る。
力の無いリエンが大量の荷物を持ちプルプルしているが、とてもいい笑顔で立っていた。
「ハロウィン前夜祭もあって沢山の新作スイーツが目白押しだったんですよ!はーい、これアリスへのお土産です」
紙袋を手渡された。
「わぁ!とっても可愛いラッピングが…ありがとうございます!…って違ーう!!」
「え?アリスこういうの好きかなってお願いしたのに」
「全く、お昼までには帰ると仰っていたのになかなか帰って来ないので心配していたんですよ」
「ごめんごめん ちょっと探し物に時間食っちゃって なぁ?」
「うん!」
仕方ないですね、とアリスは大抵許してくれる。
「(ちょろい…)」
「リエンさん、悪い大人の顔になってますよ」
「おっと、それは気をつけないとな。…でも私は、悪くも良くもない顔なんですよ 雪兎」



あの後 一度身支度をしに帰宅したブランシェットが待ち合わせ場所に来たのは午後2時。
「こっちですよー!」
先に仕事を上がっていたフルーラが手を振ってくれている。
「いやはや、結局私たち2人で行くことになっちゃいましたね 行けない人たちの分も満喫しちゃいましょう!」
「うんっ」
そうして2人は扉に向かう。
夢の国でどのように過ごしたかは、また別の話で…

「リエン様~!」
「ん?おはようアリス」
「外が!外の様子が!」
今日は10月30日、明日のハロウィンに向けてラストスパート!と言いたい所なのだが…
「はぁぁぁぁぁああ!?!!」
なんと!建物の屋根や木々が真っ白け!
「なんだ!?何が起きてるんだ!?」
「どうしましょうリエン様…」
「いやいやいやこれマズいでしょう…うん?」
何かが顔に引っ付いた。
手で取ってみるものの、イマイチつまめた感じがしない。
しかし何かに気付いたリエン、慌てて木々に近寄り 謎の白い物に触れてみる。

「なにか…分かりそうですか?」
「これ 蜘蛛の糸だ…」

「ここがジークフリートか…見晴らしがよくて嫌ぁな感じねぇ~」
街で一番大きな教会、中央区大聖堂のテッペンで 蜘蛛の魔女が糸を飛ばす。

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