【小説】クリームメロンソーダ

サン・フェイシズ・サンクチュアリ大聖堂奥、会議の間で1人の吸血鬼がくつろいでいる。
「(次 どこいくっかなぁ・・・)」

地域別の観光ガイドブックを乱雑に置き大好きなクリームメロンソーダを
飲みながら真剣に悩んでいるアガレス。
「次の任務は1人旅になるし・・・余裕持ったスケジュールにしてぇな でも天使込み狙いなら地域絞れちゃって面白くないんだよね」

普段とは違ってだらしなくした吸血鬼に1人の女性が話しかけた。
「ここは、貴方の部屋ではありませんよ」
金に輝く鎧をまとった天使が、くつろぐアガレスの余りにだらしない姿にしびれを切らしていた。
「・・・いつから居た?」
「10分程前かしら」
「あっそ 言っとくが、一応次の目的地探しだから 仕事中な」
会話の合間にソーダを堪能している、仕事をしている姿には程遠い・・・
一言いってやらなければ

「そう なら仕事中くらいちゃんとしたら?フェイス様が見たら何と仰るか」
「ずっとここに居るが何も言われてねえぞ」
「部屋の外に出るなら!だらしの無いようにしなさいって言ってるの!常識とかの枠じゃなく当たり前のことでしょ!?」
まるで母親だなと思いつつ幼げな吸血鬼は席を立つ。

「この施設に居るときくらいは自由にさせろ」
「自由が欲しいなら人並みの生活を送れるようになってからです!!」
「はぁ!?テーブルに本置いてジュース飲みながら作業してるのは人以下と言いたいのか!?」
人の目に入る場所なのがいけないのだと分からないものか・・・
プチ説教をしていた天使は仕方なく行動に移る。
「おい、動くな!俺の私物の観光ガイド集に触ろうとするな!」

なら、こちらを人質(?)にとるまで・・・!!

中のアイスが溶け、クリームの膜が張ったメロンソーダを手にする。
「ここは会議室です!!重要な話し合いをする場でしょ!!」
「ちょっお前!俺のメロンソーダをどうする気だ!」
天使は汗のかいたグラスを片手に持ち、笑みを浮かべながら「言うことを聞かないならこうします」ともう片方の手を腰に置き、ソーダを一気飲みして見せた。
「ああああああああああああ!!!!メロンソーダァァァァ!!!!!!」

どれだけメロンソーダが好きなのよ・・・と少し呆れた天使は、床に両手を付いて項垂れているアガレスを放置し卓上を片付けていく。
「私だから良かったものの、相手がシノアさんだったら問答無用で全てゴミと見なし捨てられますよ?」
ガイドブックを一箇所にまとめ上げ、グラスを食堂に返すため会議室を後にする天使ラファリー。
「メスゴリラの悪魔が・・・」と怒りに震えかけた
「場所は決まったのか?」
が後方から声が聞こえ振り返る。
「・・・!フェイス様!いつから居らしたんですか!」
そこには我らが教祖であり崇拝者であるフェイスが立っていた。
「ラファリーが出て行ったくらいだから今だな」

今だ床に座っていた吸血鬼は立ち上がり背筋を伸ばして
「実はまだ、全然決まってないっす・・・」と小声で呟いた。
「そうか なら早く決めろ」
「でも宛がないんですよ・・・ホシガタには行きたいな~と思っているくらいで」
ラファリーに邪魔されてなければもっと考えがあったのにと頭の中で言い訳した。
「ホシガタか ・・・あ、ならお前さ 今回のお土産はアンダーハーデスで話題のクソまずケーキ買ってきてくれないか?」
「はぁ・・・なんでわざわざクソ不味いケーキ買わないといけないかは触れないでおきますね・・・」

ぶぇっくしょい!!と地底のどこかでくしゃみがした




気を取り直してガイドブックを広げる。
ホシガタエリアは広大なため街と街の距離がかなりある、のに移動手段はあまり確立されていなく開発途上国なところがある土地だ。
「なので一点絞りにした方が良いな あくまで【量】じゃなく【質】専門だからなお前」
「そうっすねぇ・・・ならまだ行った事ないところ・・・」
「行きたいところがあるなら別にそこでもいいぞ」
「え!なら、ラ・メルセントロとか行って見たいです!!」

フェイスとの話し合いも済ませ部屋に戻ろうとした
「おいアガレス、どこに行く」
呼び止められた
「なんすか?俺なんか忘れ物しましたっけ」
手に持ったガイドブックを確認しながら答えるとコインを渡される。
「クリームソーダ 全部飲めなかったんだろ?」
「え?いや、それはそうなんですけど・・・メロンソーダくらい自分で」
「お前は仕事面の成績は良い 奢ってやる」
フェ、フェイス様が奢って!!??!?

・・・・・・・・・ん・・・?

「フェイス様 会議室に何時ごろ来ましたっけ」
「確か、ラファリーが出て行ったくらいだな」
そう、ついさっきだ。
「メロンソーダを飲み干したのは・・・」
「・・・ラファリーだな」
そう、ラファリーが飲みやがった。
「もう一つ質問いいですか?なんでメロンソーダの下り知ってるんすか」
「・・・お前のような「見てたんなら言って下さいよ!!恥ずかしいじゃないですか!!!!あぁ・・・いい歳したおっさんがメロンソーダ飲み干されて泣いていたなんて・・・皆に知られたら・・・」
「おっ!よく皆に言いふらすって分かったな」

長い間少年になっているアガレスは子供舌になっていた、が本人は気づいていない。

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2件のフィードバック

  1. いいめあ より:

    サンサンのみなさん楽しそうですね!
    この後、楽しそうに皆さんに言いふらして回るフェイス様とそれを全力で止めるアガレスさんを想像したらすごく笑えました(?)

    • 夕闇 より:

      ひぇぇ返信遅くなりました、コメントありがとうございます!!
      サンサンはほのぼのしていても宗教絡みでも楽しそうに過ごしているイメージがあったので(つω`*)
      後日談を漫画にしてみても面白そうですね(笑)

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