【捏造SS】ぼくのかんがえたさいきょうのせいぎ

父さんは正義のヒーローなんだ。わるい人から街を守る、自警団。だけど父さんは××年前の戦争で流れ弾に撃たれて死んだ。今は代わりに僕が街のヒーローなんだ。
でも、正義って一体なんなんだろう。数えきれないほど悪人を斬っていくうちに、僕は徐々に考え始める。僕は、父さんみたいな街のヒーローになれているだろうか?父さんと同じに、なれているだろうか。
父さんは正義のために、敵に撃たれて死んだ。―僕も正義のために死ぬんだ―
眼前の悪党が放つ銃弾を、ギリギリ剣先で弾く。それから、勢いよく相手の懐へ!
動かない相手は血にまみれ、今日の仕事は終わりだ。
後ろから、気配。強襲か!?振り返ると、暗闇の中で人型のロボットが立っていた。まるでゾンビのようにゆっくりと僕の方へ近づいている。おかしい、このエリアでは機械は動けないはずだ。近づいてくる中よく見ると、それはほとんど機械に侵された、生身の体だった。おぞましい形をしたサイボーグだ。僕は警戒しながら相手を見据える。顔の判別がつく距離で、愕然とした。
“これ”は父さんだ。
「父さん…」息が詰まって、変な声が出た。ゆっくりとした構えで銃口を向ける”父さんだった”サイボーグ。初弾を避け、すぐに合間を詰める。父さんは機械にされてなお精悍な顔つきをしていた。その顔が顎からゆっくりと開き、たくさんの噴射機構があらわれる。
もうだめだ、と思った。これは父さんなんかじゃない。噴射されるスプレー(おそらく目潰し用だろう)をとっさに左手で受け、機械の左腰関節に刃を入れる。それから思い切り斜め上に切り上げた。
動かなくなった機械体を見て、動揺する。内部半導体に小さく、警備会社の署名が付いている。つまり、”これ”は、正義のために作られたというわけだ。
ぼくは、せいぎがわからなくなった。ぼくはとうさんをきってしまった。
ぼくは。ぼくは。ぼくは。

ぼくは わるいこだ。

end.

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