「ダークマターと球体が分かり合える日は来る。そう思っている」
「……」
「ボクとグリーンはこうして分かり合えた!だからその日は必ず来る。でも…そのためにはグリーン、君が必要なんだ!!」
ボクは右手を緩めドサッと夢の剣を雪の上に落とすと、空いた右手をグリーンの目の前に突き出す。
「…ナ、ナニヲ……?」
瞳を震わせ動揺するグリーンを見つめたまま、ゆっくりと濁りきった瞳に手を進めてゆく。
「色々考えたけど…これしか思いつかなかった」
「……マサカ…⁈」
「グリーン…やっぱり君には死んで欲しくない。だからボクと共に生きて欲しい。ボクはハーフだけど、君一人くらいなら…!」
そう言いながら右手を瞳に入れきった瞬間、凄まじい瘴気が体の中に流れ始め、意識が遠のき始める。
掠れていく意識の中「ヤメテ」という誰かの声が聞こえた気がするが、そんなのはどうでもよくなってゆく。
…これしかないんだ。2人とも助かって、生きて行ける道は。
ボクさえしっかりしていれば、前の覚嘘眼のようにはならない。だから…グリーンと一緒に、分かり合える日を…実現…させ……て………
その晩、ボク達は新たな〝覚嘘眼〟となった。
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「はあ、はあ…」
傷だらけの足で息を切らしながらも走り続け、瓦礫の影に隠れる。
「どこだいー?出ておいでー」
どこからか響いてくる不気味な声に耳を塞ぎながら、必死に息を殺す。
「ここかなー?あ、違うか…」
ガタガタと小刻みに揺れる震えを抑えようとするけど、収まってくれそうにない。
どうして…どうしてこんな事になってしまったの?あたしは…いや、あたし達は誰一人としてこんな結末は望んでいなかったはずなのに…!
「んー、こっちかなー」
覚嘘眼との決着がつき、帰ろうとした瞬間にあたしは突然意識を失ってしまった。
しばらくしてから目が覚めた時、不気味な笑みを浮かべたラレイヴが宙を漂いながら、ダークマターを共に戦った仲間達一人一人に落としている姿を見てしまった。
その光景を目の当たりにしたあたしは「何かの間違いだ」と思いながらもどうしていいか分からず、あまりの事に眼を背け1人で逃げ出した。
その後迷いついたビルレスト大橋で球体とダークマターのハーフが急激に増えているという速報を聞きつけ、状況が飲み込めないあたしは新しくハーフになった人が訪れるのを見計らってその人に話を聞いてみた。
だけどその人はハーフの素晴らしさを説くだけで他には何も言わず、挙句には他の人達をハーフにするため襲いかかり始め…とにかく異常で、状況の深刻さを身をもって知った。
「ここでもないかー…じゃあ後は…」
そうして何もできずに逃げ続け、何か打開策はないかとあちこちを探して回る内に、この星の9割近くの住民がハーフにさせられてしまった。
原因は分かってる。あの人だって。あの人に何かあったんだって。
でも…何度問いかけても「分かり合える」としか答えてくれない。元に…戻ってはくれない。
あの人はきっとあの人なりの想いと覚悟で動いているのだろうけど、こんなのは違う。間違ってるよ……!
「トア君、みいつけたぁ」
「ラレイヴ……」
向かい側の瓦礫から顔を覗かせるラレイヴの笑顔は、もうあたしが好きだった笑顔じゃなかった……
End……?
まさかのホラーエンド。これで終わりじゃ…と思ったけどよくタイトルを見たらエピローグ<B>となっているんですね。
そうです、〈B〉なんです。
つまり…
ここまでの執筆、お疲れ様でした。
終わりが衝撃すぎて言葉が…
救いは…救いはないのか…
ありがとうございます。
救いならきっと…