senzadio e angelo caduto

senzadio e angelo caduto
[ヒトでなしと堕天使]

あたし達は、外の街の観光をしていた。
「今回の街も楽しかったねー!」
「うん、楽しかった!」
「素敵な街デシタ!」
街から出て、レフベル君との待ち合わせ場所に向かう。まだ時間は有るけれど、生真面目な彼のことだから、少し早めに来ているだろう。
その時、視界の隅に2つの人影が見えた。
「ねぇ、キャルちゃん?あのヒト達…誰だろう?」
「…旅人かな?」
「どうしたのデショウか…?何か言い争っているみたいデス…」
「それに、今にも戦い出しそうな雰囲気…何か怖い…」
人影の片方は、黒い翼に輪っか、角…全体的に黒いヒト。そして、彼と向かい合っていたヒトは…黄色い体に白い翼、薄っぺらい輪っかと布。そして、その体を覆い隠す色は…
真っ黒だ。
前見たヒトと同じくらい…いや、それ以上かもしれない。
出来れば視界に入れたくない。
…二人の言い争いは、もう直ぐ殴り合いに発展しそうだ。
(…大変、早く止めないと…!)「二人とも、ちょっと行ってくる!」
「「え?」」
あたしは[ヴェント・マーノ]を使って飛んで、

「何してるの其処ののっぺらぼうー!」
「「!?」」

黒いヒトを攻撃しようとしていた真っ黒なのっぺらぼうを、そのままの勢いで殴り飛ばした!

「痛ってぇ…何が起きた?」
「はじめまして、のっぺらぼうさん。…何しているのですか?其処のヒト、困っているでしょう?」
「…のっぺらぼうとは、はじめましてなのにずいぶんだな。」
(真っ黒さんには言われたくない…)「で?何をしているのかって聞いているのですが?」
「別に?知り合いに話しかけていただけだぞ?」
「……………」
ウソ、だ。
「全く…そんな疑いの目を向けないでくれよ。私は嘘は吐いてはいないぞ?」
(…ものすごく怪しい)「それより、小娘」
「…何、ですか?」
「私と契約しないか?何でも願いを叶えてやr」「間に合ってます」
「即答かぁ…残念ー」
…黒い靄の下に、薄気味悪い、貼り付けた様な笑顔があった。
アイツとそこまで話した時、
「キャルちゃん!」
「キャルサン!」
ふたりが追い付いてきた。
その時、あたしの脳裏に、黒いヒトを助ける手段が表れた。
「2人とも!ソコにいて!
黒いおにーさん、ゴメンナサイ!
Mロボ君、受け止めてーっ!」「えっ、ちょ待っ、うわぁ!?」
あたしは、黒いお兄さんをヴェント・マーノでMロボ君の方に投げた!
「えっ!?は、ハイッ!」
Mロボ君は、あたしの無茶ぶりにも落ち着いて対応し、見事お兄さんを受け止めた。
「…何なんだ、一体…」
「…すみません、ボクが聞きたいデス」
「Mロボ君、ナイスキャッチ!」
(黒いヒトは遠ざけた。後はあたしが囮になって…皆を街に返す!)
「レイミィちゃん、レフベル君を呼んできて、」あたしがそこまで言った時、

「その必要は無いですよ」
「…!」
私が一番聴いていたい声が聞こえた。

「…いつまで寄り道しているのですか?」
「レフベル君!」
見慣れた扉と共に、彼がすぐ側に現れる。
(丁度良い!早く皆を避難させて…)
そこまで考えていた時、
「隙アリィーw」
「きゃあっ!?」
「キャルちゃん!」
真っ黒な奴に捕まってしまった。
「…キャルを放しなさい」
いつもの落ち着いた声からかけ離れた、重く暗い声がレフベル君の口から出て来た。
「じゃあ、天照と交換だ」
…真っ黒な奴が発した言葉は、聞き覚え無い単語…おそらく名前だろう。口調から、黒いヒトのことを言っているのだと思う。
彼と私を交換…そんなことしたら、あたしが助けた意味が無くなってしまう…!
「ダメ!このヒトはウソツキだよ!早く、天照さんを連れて逃げてっ!」
「…キャルさん」
「…レフベル君?」
彼は、いつもの声に戻ってはいるけれど、とても冷たい、ひんやりとした声であたしに問う。
「あなたは、それで良いのですか?」
「もちろん!」
あたしが身代わりになって、天照さんを助けられるのなら…!

「…わかりました。
[タイム]」
「…えっ?」
「Mロボさん、お願いします」
「!了解デス!そぉい!」「がふっ!?」
Mロボ君があたしの方に跳んできて、真っ黒なヒトを蹴り飛ばした!
「皆さん、早く扉の中に!」
レフベル君に呼び掛けられ、あたし達は一目散に扉に駆け込んだ。

「チッ…今度は逃がさないぞ、天照…」

☆*******☆*******☆

…気がつくと、あたし達は見慣れた光景の中にいた。…私達の街、スイートストリートに帰ってこれたのだ。
「…良かったぁ」
緊張の糸が切れて、そのまま地面に座り込む。…手が、全身が震えていた。
「…キャルさん」
…その声で背筋が凍る。振り返ら無くてもわかる。…とても冷たい声。ものすごく怒っている。気を抜くと、そのまま氷付けにされそうだ。
「何、でしょう、か、レフベル、さん?」
震える声で、何とか返事をする。
「…さっき、自分を犠牲にして、彼を救おうとしていました、よね?」
「…うん、そうだよ」
「っ…ふざけないで下さい!」
何時もの彼からは想像出来ない、悲痛な叫び声が耳に響く。
「…自分を犠牲にして、他人を助けようとするなんてっ…貴方は、何処までっ!」
「レフベルさん、ストップ!」
「レフベルサン、落ち着いて下サイ!」
あたしに掴みかかろうとしたレフベル君を、ふたりが止めに入る。
「とりあえず、天照サンを何とかしまショウ?」
「そ、そうだよ!お客さんほったらかし!」
「…そうですね」
…天照さんは、あたし達が話している間、ずっと黙って辺りを見渡していたみたい。
「…い」「?」
「いいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねぇ!ココが夢の国、スイートストリート!いいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねぇ、最高だ!」
((((…煩い!))))
…この瞬間だけ皆の気持ちが一致した、気がする。
「はじめましてスイートストリートォ!」
(…ものすごく喜んでるなぁ)
「天照さん、スイストは初めてみたいデスね」
「じゃあ、案内しましょうか?」
「!?案内してくれるのか?」
「もちろん!行こう、キャルちゃん、Mロボ君!良いよね?レフベルさん!」
「ちょ、キャルさんは…」
「早く行きまショウ!」
「こら、待ちなさい!」
「ゴメン!レフベル君、また後で!」
4人揃って走り出す。
「何処から紹介する?」
「えーっと…どうしようかなー?」

🐰*******🐰*******🐰

走り去る彼女達の声が、少しずつ離れていく。
「…はぁ、後でちゃんと叱っておかないと…」
そう呟いた時、私の体を目眩が襲う。
(早く、扉を閉じないと…)
歩く度に、体が悲鳴をあげる。
(…こんな所で、倒れる訳には、いかない…!)
強引に体を動かし、扉を閉じる。
「…これで、誰も入れない」
一息吐き、その場に腰を下ろす。
(体が、頭が、全てが痛い)
そのままうずくまり、疲労の波に抗おうとする。
(私は、使命を、約束を、守らなければ…!)
たとえ、自身が、歪んだ操り人形だとしても、
(この街で、彼女達と共に、生きていたい…!)
…それと同時に、[この身を犠牲にしてでも、皆を守る]という思いが存在する。
(…我ながら、矛盾している)
…でも、どちらの思いも否定できない。
[私]という人間として、『皆と生きたい』
[レフベル]という人形として、『皆を守りたい』
(どちらも[私]だから)
…薄れ行く意識の中で、そんなことを考えていた。

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2件のフィードバック

  1. ミツコア より:

    天照の念願叶ったり!楽しそうで何よりです。最後のレフベルの独白がよいですね。

    • 若葉四ツ葉 より:

      読んでくださってありがとうございます!
      天照さんの念願叶ってものすごく嬉しそう&煩いです。とても。
      独白考えるのものすごく楽しかったです!レフベル君の(裏)設定の重さが素敵過ぎて…!相変わらずの暴走文章ですが、誉められて嬉しいです!
      感想ありがとうございました!

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