incattivarsi[インカッティヴァルスィ]…鎖などが絡まること。
*☆☆☆☆☆☆☆*☆☆☆☆☆☆☆*
…あたしのせいで、皆が傷ついてしまう。
「キャルちゃんは…あなたなんかに渡さない!」
…あたしがこの街に来てしまったせいで…。
「貴方を入れたのは間違いでしたね。…私の責任です。」
…皆に迷惑を掛けてしまった。
「キャルサンは、ボク達が守りマス!」
…あたしの、せいで…!
「もう、止めてっ…!あたしは…あたしはっ…!」
☆*******☆*******☆
「あれ?」
…あたし、どうしたんだろう?何で、泣いているのかな?
「なんか、怖い夢を見た気がする…。」
でも、何も覚えていない…。
「…まぁ、いいか!」
*☆☆☆☆☆☆☆*☆☆☆☆☆☆☆*
(でも…結局、あの夢は何だったんだろ?)
昨夜見たはずの夢を思い出そうとしている時、
「おはよう、キャルちゃん!」
「っ!?お、おはよう、レイミィちゃんっ!」
レイミィちゃんに話しかけられた。
「…どうしたの?体調悪いの?」
「ううん!ちょっとボーっとしてただけ!」
「…そう?無理しないでね?」
(…夢のことをいつまでも引きずるなんて、あたしらしく無いな…)
「あ、そう言えば…
今日、どんな夢見た?」
「へ?何で夢…?」
「昨夜の夢は[初夢]って言ってね、見た内容が現実になるんだって!」
(見た夢が…現実に?)
…モシモ、アノ夢ガ、悪夢ダッタラ?
(大変、今すぐ、どんな夢だったか思い出さないと…!)
「…其処のお嬢ちゃん。」
「え…あたし?」
呼ばれて振り向いた先に居たのは、白い身体を覆い隠す様な、全身黒ずくめの…
「初めまして。キャルディ・バレーノ…[魔女の末裔]さん?」
真っ黒なヒトだった。
「…レイミィちゃん、逃げるよっ!」
「ええっ!?キャルちゃん?」
あたしは咄嗟に彼女の手を握り、回れ右して走り出した!
(ヤバイヤバイヤバイあのヒト真っ黒今までアソコまで真っ黒なヒト見たことない早く逃げないと!)
行く宛てなんて無い、とにかく今すぐここを離れるっ…!
「…逃がしませんよ?」
「痛っ!」「キャルちゃん!」
(何、足が…っ!)
あたしの足には、血の様に赤黒い鎖が繋がれていた。
「逃げるなんて…悪い子には、オシオキですよ?」
「嫌…イヤッ…!こっち来ないでぇ…!」
「キャルちゃんに…近付かないで!」
…気がつくと、暖かい何かに包まれていた。
「レイミィちゃん…?」(これは…[リボネス]?)
「キャルちゃんは…私が守る!」
(いけない…!あの黒いヤツにレイミィちゃんが触れたら…イヤな予感がする…!)
「ダメ、早く逃げて!あたしは大丈夫だから…」
「大丈夫には見えないよっ!」
(…お人好し!)
アイツにとって必要なのはたぶんあたしだけ…レイミィちゃんは関係無い!
(だから…「[ヴェント…」
「キャルサンに何しているのデスかぁぁぁぁぁっ!」
…さっきまでアイツが居た所に人影が割り込み、そのヒトの拳が床にヒビを入れた。
「Mロボ君!」
「大丈夫デスか?キャルサン。
さて、と…其処のアナタ、キャルサンを離して下サイ」
「へぇ…嫌だと言ったら?」
アイツの言葉に答えるかの様に、彼は戦闘体勢を取り、
「…実力行使、しか無いデスかね。」
そう言った。
…それでもアイツは揺らがない。
「…やってみたら?」
あれだけ真っ黒で、余裕そうで…かなり強いチカラを持っている…そんなヒトと戦ったら…!
(Mロボ君まで巻き込む訳にはいかない!)
「止めて…Mロボ君っ!」
「止めまセン!行きマス…!」
(どうしよう!このままじゃ…!)
「騒がしいですね…何事ですか?」
「レフベル君!」
「…貴方の客人ですか?キャルさん。」
「ち、違「違います!あのヒトは、キャルちゃんの敵です!」
「アイツは誘拐犯デス!」
あたしが答えるより前に、ふたりがそれぞれの言葉で否定する。
「…そうですか、お客様?」
レフベル君に聞かれて、アイツは迷惑そうに答えた。
「勝手に悪者にしないでくれ、俺は彼女と話したいだけだ。」
「…ならば、鎖は必要無いでしょう?」
「ああ…こうでもしないと、逃げてしまうからね。」
アイツがあたしの足に絡まる鎖を睨むと、鎖がより強く締め付けてきた。…アイツの感情が鎖を操っているらしい。
「彼女はこの国の住民です。本人の許可無く連れて行くのは止めて頂きたい。」
「…面倒臭いな。邪魔者は…排除する。」
「…そんなっ…!」
…あたしのせいで、皆が傷ついてしまう。
「キャルちゃんは…あなたなんかに渡さない!」
…あたしがこの街に来てしまったせいで…。
「貴方を入れたのは間違いでしたね。…私の責任です。」
…皆に迷惑を掛けてしまった。
「キャルサンは、ボク達が守りマス!」
…あたしの、せいで…!
「もう、止めてっ…!あたしは…あたしはっ…!」
「どーしたのー?」
「姫、様…?」
この場に合わない、ピアット様の無邪気な声が聞こえた。
「こんにちは、キャルっ!
あれー?その足…鎖?」
「あ…これは、その…」
「貴方は、この国の王族か?」
あたしが答えに困っていると、アイツがあたし達の会話に割り込んできた。
「うん?まぁそんなところー。ところでキミ、だぁれー?」
「キャルを引き取りに来た者です。」
「ピアットちゃん、騙されないで!」
「アイツは悪者デス!」
「…そっか、悪いヒト…キャルを虐めているの?」
「いや、違」「違わないですよ、この誘拐犯。」
レイミィちゃん、Mロボ君、レフベル君がそれぞれの言葉で反論した。すると、
「…ワルモノ、かぁ…」
…彼女が、今までの明るい声とはかけ離れた、不機嫌そうな低い声で、小さく呟いた。
そして…
「なら、オシオキ、しないとねっ!」
そう叫んだ。
…その言葉に反応したかのように、
空が真っ赤に染まった。
「…何、これ?」
「嫌、イヤ…空、真っ赤…!」
「…レイミィちゃん?大丈夫!?」
真っ赤な空を見てから、レイミィちゃんの様子がおかしい…。
「あぁ、そっか…ゴメンね、レイミィ。」
(…姫様は、何故かを知っている?)
「…直ぐに終わらせるから、ね!」
「お菓子なオシオキ![チョコレートフォンデュ]!」
彼女が叫んだ瞬間、アイツの足元の床が無くなり、代わりに焦げ茶色の池の様なモノが現れた。
「な…何なんだよ、コレ!」
「[チョコレートフォンデュ]、別名[チョコの底無し泉]だよっ!
泉から出るか、飲み込まれるか…ふたつにひとつ!さあ、キミはどっち?」
「ふ…ふざけるなっ!」
「ちなみに、泉から出るの、スッゴく難しいよー?頑張ってねっ!」
彼女の言葉が、まるでスイッチだったかの様に、アイツが泉に飲み込まれ始めた。
「くそっ…俺は、お前を諦めないぞ…[魔女の末裔]キャルディ・バレーノ!次会った時、必ず、お前を…!」
*☆☆☆☆☆☆☆*☆☆☆☆☆☆☆*
アイツが完全に飲み込まれ、真っ赤な空が少しずついつもの色に戻っていった。
「…空が、元に戻りそうデス。」
「良かった、ちゃんと追い出せたみたい…!」
「レイミィちゃん、大丈夫?」
「うん…もう平気だよ!
それより…アイツを追放出来て良かった!ねっ、キャルちゃん!」
…本当に、良カッタ、のカナ?
(アイツは、また来るかもしれない…そうしたら、また、皆を…)
「そんなの…嫌ッ!」「キャルサン…?」
「心配、無いよー?」
「…姫様?」
「私達に、任せて下さい。」
「レフベル、君?」
「…今宵の夢は、恐ろしい夢でした。ですが、悪夢は所詮夢…。」
(何、言っているの…?)
「さあ、早く、夢から覚めなさい。」
…あたしの意識は、そこで途切れた。
☆*******☆*******☆
「ふぁあぁ…」
いつもの様に、あたしはベッドの上で目を覚ました。伸びをして、顔を軽く叩き、布団から出る。
(…何か、いつもより疲れている感じ…昨日そんなに頑張ってたっけ?)
「…まぁ、いいか!」
*☆☆☆☆☆☆☆*☆☆☆☆☆☆☆*
「おはよう、レフベル君っ!」
「…貴方ですか。おはようございます。」
(…あ、れ?)
どこか違和感がある。何かはわからないけれど…
「元気無いねー、どしたのー?」
「…色々、あったのですよ。」
(…言いたくない、のかな?)
「とりあえず、お疲れ様!」
「…ありがとうございます。」
「キャールちゃん!」
「あ、おはよう、レイミィちゃん!」
「うん、おはよう!レフベルさんも、おはようございます。」
「キャルちゃん、今、大丈夫?レフベルさんとお話してた?」
「大丈夫だよ!挨拶と差し入れを持って来ただけだからー。」
「そうなの?えっと…良いですか?レフベルさん。」
「ええ。私は大丈夫です。」
「それじゃ…行こう、キャルちゃん!レフベルさん、お邪魔しました!」
「うん、行こう!じゃあねーレフベル君っ!」
「はい、また…。」
(そう言えば、今日…怖い夢見たんだ…)
(そうなの?…どんな夢?)
(スイストの空が真っ赤に染まる夢…)
(空が…真っ赤に?)
(うん…夢で良かった…)
🐰∞∞∞∞∞∞∞🐰∞∞∞∞∞∞∞🐰
…この国は、[夢ノ世界]。
…夢を壊してはいけない。
…だから、私は…
(この[夢]を守る)
(例え自分が傷つくことになっても)
夢で良かった・・・のか!?謎が残る黒い影ですね。正体が気になります!
コメントありがとうございます!その辺りの話はいつか書けると良いなぁ…。
これは…!もしかしたら無限ループの可能性…!?
割り込んでくるMロボ君の格好良さ、
そして皮肉たらしいレフベルの意味深な発言といい、気になる部分が沢山ありますね…!
仲の良いキャルちゃんとレイミィちゃんのやり取りがとても微笑ましいです(*^^*)
コメントありがとうございます!無限ループ…!その発想は無かったです!
Mロボ君の登場シーンは格好よく…と思いながら書きました!レフベル君の意味深発言は、峰時さんが呟いていた彼の設定から思いついた台詞です!
予定より重苦しい話になってしまったので、レイミィちゃんに浄化してもらいました。